男子高校生の体調不良集 part3

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湊side


スマホの向こうから聞こえた、ガタンとスマホが落ちる音。

続けざまに聞こえるのは、どさりと重たいものが倒れる音。...まるで、人が倒れるような。


「陵、陵！」


通話は終わらないままなのに、そこから先の音声は、何一つ聞こえてこない。

不安で怖くて、手が震えた。

頭が一瞬で真っ白になる。


「どうかしたのか？」


手に取っていた本を本棚に戻しながら、ひろが聞いてきた。


「陵が、なんか、へんで、」


ぐちゃぐちゃな頭のまま、出てくるのは支離滅裂な言葉だけ。

静かすぎるスマホの向こうに、変に心臓がうるさくなった。


「落ち着け。陵がどうかしたのか？」


ぽんぽんと、軽く背中を撫でられる。

ひろも不安げな表情ではあったものの、いつもの何倍も頼もしかった。


「今、電話、かかってきて。息おかしかったから、過呼吸起こしてるのかも...」


徐々に頭が、冷静さを取り戻して行く。

あの詰まるような息遣いはたぶん、過呼吸だ。


「え、やばいじゃん、教室？」


「ううん。教室じゃないと思う。きっと誰もいないところ」


もし陵が教室にいるのなら、今スマホの向こうがこんなに静かなのはおかしい。

じゃあどこにいるのか。...トイレとか？


「っおれ、探してくる」


いてもたってもいられなくなって、授業が始まる2分前にも関わらず、気付いたときには体が動いていた。

ひろは小さく、オレも、と頷く。


「蓮！」


まだ先生がこの図書室に来ていない中、授業を抜けることを知らせておくべきなのは学級委員。

おれはクラスメイトと談笑していた蓮を、大きめの声で呼んだ。

弾かれたように顔をこっちに向けた蓮が、駆け寄ってくる。


「どうしたんだ？」


「陵探しに行ってくるから授業遅れる！」


ひろの雑すぎる説明に、蓮がきょとんと目を瞬いた。


「...え？何で？」


焦る気持ちはわかるけど、いくらなんでも色々説明を省きすぎだ。

ひろの説明に、補足する。


「陵がどこかで過呼吸起こしてて、たぶん倒れてる、から」


そのおれの言葉に、蓮の瞳が見開かれた。


「ぇ、陵体調悪かったのか、」


どうしよう、と戸惑ったように震える声で呟く蓮。

どうしたの？となるべく優しく問いかければ、その答えはすぐに彼の口から飛び出した。


「おれ、ここ来る途中で陵と会って。陵に、資料室まで資料運んでくれないかってお願いしちゃった...」


────どうやら陵は、資料室にいるらしい。



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