辺りがやけに静かですね:緑 ページ10
放課後のやけに静かな廊下。
誰もいないはずの教室から微かに聞こえてくるのは密かに想いを寄せている鈴木くんの歌声だ。
『…なんだかんだ言っても』
夏が好きだったりセロリが好きだったりするあの歌。鈴木くんが好きなあの歌。
"つまりは単純に君のこと好きなのさ"
サビ終わりを思わず一緒になって口ずさむ。
それが詞だと分かっていても、思わず顔に熱が集まる。
『へ、Aちゃんおったんなら声掛けてよ』
私の存在に気付いた君が照れ臭そうに笑うから、ごめんごめんと謝りながら胸がきゅんと疼いた。
鈴木くんが『俺、Aちゃんの声好き』と言うから、私も「私は鈴木くんの声が好き」なんて返した。
*
『てかさ、』
古典の先生の喋り方が可笑しいとか、野球部のコーチが面倒くさいとか、平面ベクトルの内積が理解し難いとか。高校生らしい雑談をしていたところ、鈴木くんが新たに話題を切り出した。
『俊光でいいってば、鈴木くん、じゃなくて』
急に何を言い出すかと思ったら。
けど、お願い!なんてそのかわいい顔で首を傾げられたらダメ、なんて言えるわけがない。
「としみつ、くん」
『はーい?』
たどたどしく彼の名前を紡ぐと戯た返事が返ってきて、思わず頬が緩む。したり顔でこちらを見つめる鈴木…としみつくんにちょっとムッとして、こちらも云返した。
「…辺りがやけに静かですね?」
彼は驚いたのか元から大きな目をさらに開いた後、さっきみたいに照れ臭そうに笑った。
『…Aちゃんの方が一枚上手だったわ』
辺りがやけに静かですね。
_貴方の声が聞きたいです。
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樺倉桐華 - ゆるり。さん» 作者さま自ら返信ありがとうございます…! これからも応援させていただきます! (2018年10月8日 9時) (レス) id: dc75935ff3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 樺倉桐華さん» コメントありがとうございます! 私もこういった類のお話が大好きで…自分が好きで書いているものを好きと言って頂けるのは嬉しいものです。更新の方も頑張ります! (2018年10月7日 20時) (レス) id: 754e0e8a24 (このIDを非表示/違反報告)
樺倉桐華 - こう言う言葉の裏に隠された本当の意味…みたいなの好きです! これからも応援してます、更新頑張ってください。 (2018年10月7日 17時) (レス) id: dc75935ff3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆるり。 | 作成日時:2018年10月6日 20時