【東海オン工ア】東海浪漫【短編集】

動かない案山子：青 ページ9

君のベッドから甘ったるい香水の薫りがするようになったのはいつからだっけ、君の寝室に私のものでも君のものでもないピアスや髪の毛が落ちてるのが当たり前になったのはいつからだっけ。
「、っは…」

…君が行為の時にキスしてくれなくなったのはいつからだったっけ？

「ね、きすして」
そう何回強請ってみても、
彼はいつも私の唇に人差し指を当てて誤魔化す。

気付いてないと思ってるかもしれないけど、
女ってこういうところ、敏感なんだよ？
馬鹿な私だからって舐めてもらっちゃ困るわ。

それとも気付いているのを分かっている上でわざとそのままにしているの？弄ばれているの？

それは彼のみぞ知ることで、
ぐるぐる考えてたって正解かなんて見つからない。
…いや、ほんとは正解なんて分かりきってるけど、
いつまでも馬鹿な女のふりをしている。

君の気持ちがもう私に向いていないのは確かなのに、現実から目を背け、囚われ続ける私はまるで畑に置かれてずーっと動かない案山子のようで、私がここにいる必要性なんてきっとなくて、傍から見たら実に滑稽で。

それでも、そうやって頭では理解していても、

「…りょうくん、大好き」
『どうしたの、かわい』

君が私に好きをくれなくなっても、
私にはりょうくんしかいないの。

だから、このまま騙しつづけていて？




動かない案山子。
＿あなただけを見ています。

辺りがやけに静かですね：緑→←海が綺麗ですね：黄

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