中芥『忘れた』 ページ9
◆
「芥川君、この書類頼める？」
僕が出来るものならやります、そう言って書類を貰った。首領はお得意の笑みを浮かべて手を振る。
首領と別れ執務室へと向かった。時刻は深夜2時。樋口らももう帰っている。
昇降機から降り、いざ執務室へと入り、そして机に座った。ここまでの流れは問題無いのだが、僕はあることに気づく。
「………名前…」
そう言えば、この書類は結構重要なものではないか。書いた人の名前が必要な、確か太宰さんもこれだけはしっかりやっていたような。
氏名を書く欄を少し見る。暑くもないのに汗が流れる。
僕は芥川、芥川…
ペンがこれ以上進まない。自分の下の名前が思い出せないのだ。いや、何故思い出せないのか。それはまあ下の名前を呼び合ったりするように親しい人はいないからだと思う。
というか僕に下の名前なんて無かったのでは？ためしに机の中の私物の氏名欄を見てみた。
やはり、全て『芥川』としか書いておらぬ。このままでは本当に自分の名前は思い出せそうにない。
「こんな事でつまずくなど太宰さんに…」
そうだ、他の人の名前は覚えているというのに。やはりポンコツか。嗚呼苦しい。ペンを持つのすら辛い。
と、部屋の外を歩く音が。他の下級構成員はもう帰っている筈。ならば幹部か、あるいは幽霊……いやない絶対幹部だ中原幹部だ、そうだ。
「おい、芥川。入っていいか」
的中。幽霊でなく良かったと思う反面、何を聞かれるかが怖い。
「何してンだ？手前もう帰ってもいいだろ」
「首領から直々に渡された書類をでかさないと…」
「ふーん…って書類真っ白じゃねぇか」
痛いところを指摘してくる。書類に視線を戻し、先に内容を書いて仕舞おうとペンを持てば、ひょいと視界から書類が消える。
「ほら書けよ。書類を書いた日付、3月31日、書類を書いた人の名前、芥川龍之介」
特に難しい内容じゃねぇだろ。
はっと我に帰る。そうだ、僕は芥川龍之介。龍之介…龍之介…、忘れぬように何度も何度も復唱した。
また渡された書類に今度こそと自分の名前を書く。
中原さんは頑張れよと一言言ってから、僕の頭を痛い程に撫でて執務室から出ていった。胸がこれまでにないほど暖かかった。
♀♂
やつがれちゃんに会うために執務室まできたちゅやさんｲｹﾒﾝ。
もっと暗い感じにしたかったけど書く気力がなかった。
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なかゞわとまと - あくたん`∀´さん» ですよね、わたくしもナンパとか日常茶飯事だと思います(( コメントありがとうございます！続編も頑張ります！ (2017年4月22日 22時) (
レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
あくたん`∀´ - ふおおおおおおお！！やつがれ！やつがれちゃああああんっ！！…すみません、取り乱しました。書いていただきありがとうございます！やつがれちゃんは美人だからしょっちゅうナンパとかされてますよね！！← (2017年4月22日 9時) (レス) id: b724a19623 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - 桐宮さん» はい分かります。可愛すぎますよね、あの二人は探偵社とポートマフィアの天使だとわたくしは思ってます。 (2017年4月21日 22時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - あくたん`∀´さん» リクエストありがとうございます！モブ芥で、太宰さんと中也さんが助ける最高に最ッ高な感じのお話ですね、分かりました！(( (2017年4月21日 22時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - 7×7さん» いえいえ！またリクエストお願いします！掲載は続編のほうになると思いますが…(( (2017年4月21日 22時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なかゞわとまと | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TOMOTO/
作成日時：2017年3月26日 23時
