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56. ページ6

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「逃げよう…」


『え…?』


「ここから逃げよう。2人で、逃げよう?」


『なに、言ってんの…?』









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外出実験にも慣れてきたいつかの日の夜。



僕は、ふと気になった事を職員さんに訪ねた。





その時部屋には僕とAと茶髪の職員さんだけしか居なくて


まぁ、いつも通りと言えばそうなんやけど。




その日の天気は、とてもやないけど街なんか見えるわけも無い豪雨。



さすがに危険と判断され

今日の外出実験は、扉を開け外を少し見ただけで帰ってきた。




少し前から外出実験用にと書き始めたノートに


豪雨で外に出られなかった

雨があんなに強く降るなんて想像もしとらんかった

怖かった


と書いた。




昨日のページよりも格段に少ない文章量に

少し肩を落としていた。



そんな日の、夜。





「あの、職員さん。少し気になったんですけど、質問してもいいですか…?」


「なんや。」


「あの……りんご、りんごって元気ですか…?」





僕がふと聞きたくなったこと。


それは、少し前、…と言ってももうだいぶ前になってしまったが

この部屋にいたりんごと言う女の子の事。



Aがこの部屋に来た次の日に引っ越して行ってしまった。



今までに他にもこの部屋から引っ越した人は何人も居るけど

でも、りんごのことは何故が

とても、気になる。





「あぁ、小瀧か。」


「こ、たき?」


「……………りんご、そう、りんごな…!」


『小瀧って、苗字ですか?』


「忘れてくれ、」


「小瀧りんごって名前なんですか!?」


「いやほんまに、俺があとから怒られるからそんなに言わんといて…笑」





りんごは、自分の苗字は忘れたって言って教えてくれんかった。



けど、忘れたなんて、ほんまは嘘やったんちゃうかな。


だって、僕も流星も、元々は知らんかってんで?


神山智洋って名前も、

職員さんが教えてくれた名前。



本当の名前かどうかは知らんし

最初に名前があったのかすらも分からん。



もしほんまにりんごが苗字を忘れてしまったのなら職員さん達に教えてもらえばいい話や。




今更になって、

りんごの知らない一面を知った僕は


この建物の中のどこかに居るであろうりんごに

人知れず

思いを馳せた。

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#TODAY(プロフ) - キャラメルさん» 初めまして!!読んでくださってありがとうございました!他には無い話を書きたくてだいぶファンタジックになってしまいましたが、難しくは無かったでしょうか…(汗)Shadowsを聴いた時はこのお話を思い出して下さったら幸いです。他の作品も頑張ります!! (2021年12月31日 21時) (レス) id: 3e33249399 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - #TODAYさん初めまして!この作品の世界観にぐっと引き込まれてしまい、思わず感想を伝えたくてコメントさせて頂きました!!!最後の方は読みながら本当に泣きそうになりました!他の作品も読ませていただきます!最高の作品に出会えたことに感謝します! (2021年12月31日 13時) (レス) @page35 id: 826f2c597b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:#TODAY | 作成日時:2021年9月15日 16時

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