チート夢主大戦争【オリジナル】

第15話：出会って３秒で乞いに墜ちる（８） ページ16

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ズドドドドドドドドド……という地鳴りが大きくなるにつれ、工場は小刻みに振動しだした。パラパラと天井から埃が剝がれ落ち、スキンヘッドをロマンスグレーに格上げする。しかし、そんなことに構う余裕がある者などいなかった。


「ふぇ?」

「!?」

「……な、何だァ!?」


増幅する振動に三者三様に狼狽えていたのも束の間、誰も予想だにしなかった救世主達――その数、ざっと数えて5万人――が、入口をぶっ壊してなだれ込んできた。金属製の重厚なシャッターが可塑性を発揮し、バリバリと断末魔を上げながらへし折られてゆく。だが、その耳障りな破壊音は、侵入者らの叫びに掻き消されてしまった。


「「「「「希乃ちゅわァァァァァァァァァァァぁぁん!!!!!!」」」」」

「お、お兄さん達!?」


……もうお分かり頂けただろうか、ストーキング集団・ピンピンコロリジョギングクラブのお出ましである。


「な、何だお前ら!?」


小規模な市レベルの男性集団を前に、大男が動揺を隠せないのは当然の事だ。大群は一様に、美少女の盗撮写真をプリントしたTシャツに桃色法被、これまた桃色のバンダナには白っぽい棒を数本カスタムしている。こんな奇天烈極まりないいで立ちの輩に囲まれ、平静を保てる方がどうかしているのだ。


そんなまっピンク若人教徒らが希乃を鷲掴みにしているやーさんの前方20ｍに集結したことで、無機質な灰色の空間は、一気に華やかな装いに染め上げられていた。


「何処からこんなに……」


しかし、場の華やぎとは対照に、渦中の3人はただただ困惑していた。頭の切れる摩那ですら、状況を呑み込めていない。だがその混乱を他所に、群衆の中心から前に踏み出し、熱い演説を始める男性がいた。


「おい、ムキムキ黒坊主!!早く希乃ちゅわんから汚らわしい手を離せ!!それと、拳銃を捨て降参するんだ!!離さないなら、実力行使だぞ!!」


彼の名は森戸健一(34：会社員)。希乃を幼少期から見守って来た生粋のストーカーであり、希乃ちゅわんファンクラブ会長でもある。彼の口上で我に返った埃アフロは、慌てて臨戦態勢に入る。


「お前らみたいな雑魚ヲタ、撃てば一発なんだからな!?」


ジャキッ、と撃鉄が身を起こされた鉄砲など全く意に介さず、無鉄砲は口を噤もうとしない。


「フッ、馬鹿にされたもんだな、俺達も。」


やれやれとわざとらしく肩を竦め、森戸は後列のモブ達を振り返り頷き合う。


「……良いだろう。見せてやる、ヲタクの底力を!」

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