チート夢主大戦争【オリジナル】

第16話：出会って３秒で乞いに墜ちる（９） ページ17

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森戸の挑発と同時に、何処からかBGMのイントロが始まった。図ったようにタイミングばっちりな演出に、希乃らは呆気に取られるしかない。だが、ぽかんと口を開けている3人を他所に、ヲタク――と言えば聞こえは良いが、詰る所ただのストーカーである――らは、一斉に構えに入った。


頭部に挿していたロウソクの様な物体を抜き取り、太鼓奏者の如く前方に突き出す。続いて、深呼吸を一つ。一瞬の静寂の後、セイッ!という会長の掛け声を合図に、彼らがその円筒を同時に地面に打ち付けると、


バキィッッ!!!!


何かが折れる様な破壊音が束となり、次の瞬間、



――薄暗い廃工場は、ピンク色のサイリウムの海となっていた。


「……んな”っ!?」


一体感あるライヴ会場の如き感動的な光景が広がっている。しかし、突如襲い掛かった燦然たる光線に反射的に目を瞑った3人に、それを確認する余裕は無い。閉じた瞼の裏を弾けまわる火花のせいで、視覚どころか平衡感覚まで危ういのだから。だが、くらくらする視神経を落ち着かせようと尽力している3人に構わず、変 態集団は次の動作に移っている。


いや、ファンなら推しの体調を気遣ってやれよ!っていっても、ヲタ芸のルーティンは崩されるべきではない神聖なもの(作者友人談)らしいから、どうしようもないか。……そんなに大事なのか、ヲタ芸。

メタ作者ですら話についていけていないが、読者様方にはまだまだお付き合い願いたい。ヲタ芸の真骨頂はここからなのだから……。



「ォォォォォォォォォォォォッ!?」


「「「「「うォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」



「ォォォォォォォォォォォォッ!?」


「「「「「うォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」



「ォォォォォォォォォォォォッ!?」


「「「「「うォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」


セルフサービス方式のコール＆レスポンスを幾度となく繰り返し、推し事の気(?)をチャージする群衆。そのバックでは、弾けるアップテンポと、合間にピコピコと飾り付けられた電子音が鳴り響いている。中毒性を孕むこの楽曲は、どこぞの四葉アイドルや原宿系ポップアーティストを彷彿させる。



しつこいテノールの反復が途切れた時、遂に場が動き出した。




「「「「「うぉおおぉぉおおぉぉおおおぉぉおおおおあああああああッッ、よ”っしゃああああああああああ！行くぞォォッッ!!!」」」」」

第17話：出会って３秒で乞いに墜ちる（１０）→←第15話：出会って３秒で乞いに墜ちる（８）

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