121.濁っていないはずの玄米茶 ページ31
.
.
カレーを二人で食べた。
...今まではシチューなんかも食べたりしてたかな。
色んなものを二人で、この机の上で食べた。
大野さんの家の机の上でも色んなものを食べた。
顔を向かい合わせて二人で笑うたび、幸せだって思えた。
.
智「...んまい」
「ありがとうございます」
智「やっぱりにんじんいい」
「多く入れた甲斐がありました。」
.
シチューでもカレーでも、彼はにんじんを多く入れろと我儘を呟いた。
...それは、私が我儘な愛をいう代わり、と言っても難じゃない。
.
智「...最初に言うね」
.
大野さんが手元にあるティッシュで口を拭いた。
私はその間にお茶をゴクリと飲む。
それだけで緊張感が私の中で走った。
.
智「...Aちゃんは、二宮と幸せになりたいでしょ」
「...はい？」
.
思いがけないような言葉。
その言葉に対して私はどんな感情を抱いたかと言えば
「意味わかんない」や「そんなわけない」などだと思う。
...でも正直なところ、ひっくり返してみれば「そうかもしれない」や「幸せになりたいかも」なんて馬鹿みたいな事考えてる自分だって少なからずいるはずだ。
.
彼は、摩訶不思議なことを言っている。
結局はそれが結論だった。
.
智「...より戻そうって、二宮に言われたんでしょ？」
「...っ、言われてません」
智「俺の前で嘘つく？...そっか、俺も嘘ついてたね」
.
そうやって切なげに言いながら、カレーのお皿を私の分も片している。
私は放心状態。
何をすればいいかわからない状況。
.
智「2回言われてることも、ぜんぶ知ってるよ」
「...なんで...」
智「...その言葉に少し揺らいじゃってるのも、なんとなく分かる。その言葉を忘れればいいのに忘れられてないのも。」
「...」
智「...俺には、伝わってくる」
.
注がれるお茶のペットボトルの先を見ていた。
鮮やかな緑のはずなのに、なぜか濁って見えた。
緑茶じゃないはずなのに。
.
智「...本当は、無理してるでしょ？」
「...」
智「俺といるの辛いって思ってるでしょ」
「...」
智「正直俺は、Aちゃんが窮屈に思ってて無理させてるんだなって思ってる。...だから辛い。」
.
涙すらも言葉すらも出ない。
大事な人を失うことの辛さが、今はっきりと分かった。
.
.
122.悲しいキス→←120.あなたと幸せになりたい。あの人とは幸せにはなりたくない...
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月13日 22時
