118.君を幸せにするのは俺ではない…sideO ページ28
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智「...」
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ウロウロと視線が動く。
傍にある冷たいベンチに腰をかければ、...その切ない木が真正面に写るから...さらに悲しくなる。
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何かが失われる危機に、胸がざわめく。
Aちゃんは、幸せじゃないんだ。
体が勝手にそう決めつける。
...だって、Aちゃんは絶対二宮と幸せになりたいはずなんだ。
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『...大好き』
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呪文のようにそう唱えるAちゃんは、
果たして本当にそう思っているのか。
好きなんて、何回も言えばいいってもんじゃない。
態度で好きを示してほしい。
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唇を艶めかしく離したらAちゃんは優しく「なによりも、あなたが大切なんです」と言ってから
また静かに細い腕を俺の背中に回した。
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そしたら俺はその愛に対してそれ相応の、...いやそれの愛の倍を返すだけ。
そのAちゃんのハグに対して俺は強く腕を回してまたキスをするだけだ。
唇を交わして、ゆっくり夜の時間に入っていくだけで。
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立ったまんま、ずっと抱き締めあって。
...靴を脱ぐことすら忘れるくらい、
それくらい愛し合ってた。
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うっすらと目を開けても、Aちゃんの顔は見えないくらいこの玄関は暗い。
何もかもを忘れて、二人だけの時間が二人にとっては幸せだったんだろう。
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智『...ねえねえ』
『はい？』
智『...抱きしめていい？』
『なんでわざわざ聞くんですか？』笑
智『...ちゃんと目も開けとくんだよ。恥ずかしがって目を瞑っちゃダメだよ』
『...なんで？』
智『今ある幸せを存分に感じてもらいたい。』
『...』
智『...目を瞑ったら現実から背いてるみたいじゃん』
『...大野さんってやっぱり面白い人だね』
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顎を俺の肩に乗せてるAちゃん。
その頭に俺の頭を寄せたら優しく微笑むように笑う。
また唇を寄せて、お互いしっかり目を開けて
ここにある現実から目を背けずに
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ただ昨日の出来事振り返ってニヤけてるとか...。
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気持ち悪いな、なんて自分を嘲笑う。
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それくらい好きなんだよ。Aちゃんのこと。
...でもそれはきっと俺の一途。
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俺が幸せにするべき、とは思えない。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月13日 22時
