114.優しいあなたを二度裏切ることなんてできません。私には。 ページ24
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車の窓をノックする。
そうすると、いつものように大野さんは私を見て微笑んでくれる。
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この人といれば、その日あった嫌なことも忘れられる気がするんだ。
...でも、今日のことはなかなか忘れられそうにない。
...当たり前だ。
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智「...顔が、浮かない顔してるけど」
「...え？」
智「可愛い顔が台無しだよ？」笑
「可愛くなんか...ないですよ」
智「.....今日は、俺ん家ね」
「...はい」
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色とりどりの街を通り抜けて、
ネオンの色が私の網膜を突き破ってく。
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智「Aちゃん。」
「はい」
智「...ううん、呼んでみただけ」
「あの」
智「ん？」
「...今日、帰ったら抱き締めてもらっていいですか」
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あなたは驚いた顔を見せたけど、すぐにまた優しい顔に戻る。
いいよ、と言いながら優しく笑ってくれる。
この不安をとっぱらってくれるのは、やっぱりあなたしかいない。
...だから、あなたに縋るしかないの。
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やっぱり、私はあなたを裏切ることなんてできない。
あなたの涙はもう見れない。
時には私にまで縋って泣いてたの。
それくらい弱ってたの。
...弱らせてしまったのは、誰でもない私のせいだ。
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...また私のせいで泣かせたくない。
離れたくない。
離れられない。
離れちゃいけない。
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智「...Aちゃん」
「...はい」
智「好きだよ...」
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赤信号の赤色に染められた大野さんの横顔は
男の人なのに綺麗だった。
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「私もです。」
智「...大好き。」
「私も大好きです」
智「...言葉じゃ、伝えられないくらい大好き。」
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あなたは毎回毎回、私を痛いくらい抱き締めてくれる。
そのハグを大切にするかのように。
かといって、言葉も綺麗に伝えてくれる。
男性としては、素晴らしい男性だ。
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なのに、なんで私は他の男に目移りしていたのだろうか。
みっともない女だし、最低な女だ。
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「大野さん」
智「ん？」
「今日は、ずっと抱き締めてもらいたい気分です」
智「んえ？」笑
「...夜ご飯なんて、いらないから、」
智「...」
「私には、あなたですから...」
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こうでもしないと、
私はあの男が頭から離れてくれないの...。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月13日 22時
