出会い2 ページ3
木箱の前にしゃがんだ男は冷たくなった兄弟の身体を私の上からのけて、ひょいと私を乗せた。私たちで言う肉球に当たるところだ。母さんは「手」と言っていた。
手は兄弟達の肉球とはまた違った形で、私の身体がすっぽり収まってしまうくらいかなり大きかったが丁寧に私の身体をあつかったので私は安心してそこに身を寄せた。
「…のう、わしと一緒に旅する気はないか?」
「口」というものが動いているから何かを言っているのだろう。けれども、兄弟や私の使う言葉とはかなり違うようで何を言っているのかはさっぱりだ。
それが残念ではあるが今はとにかく男の体から伝わるぬくもりが心地いい。
思わず喉が鳴った。
「…!
……お前さんって人の言葉が分かったり…なんて……」
驚いたような顔だが喜んでいるといった顔をした。
私が喉を鳴らしたからだろうか?
「…そうじゃ!自己紹介がまだじゃったのう
わしはぬらりひょん、これからよろしくな」
人間はしばらく身体を擦り寄せる私を見ていたがふと思いついたようににこやかな笑顔でそう言ってみせた。
……今はまだ、この男が言っている言葉を何も理解していない私だが、いつか理解できる日が来ればいいなと思った。
だって、こんなにコロコロと表情を変える人間なんだもの、きっと言っていることも面白いはず…
──兄弟の亡骸はあの後丁寧に埋葬してくれた。
そうして私は一緒に旅をすることになったのだ。
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作者名:たこ焼きんぐ | 作者ホームページ:http://id54.fm-p.jp/579/TAKOYAKINNGU/
作成日時:2018年11月17日 17時