検索窓
今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:37,639 hit

8.奇妙な関係性 ページ8

穴場を教えると、次の日から彼は私の昼食の時間に時々現れるようになった。

彼は一ヶ所に留まらすに場所を転々としているようで、私がお気に入りの倉庫裏に足を運べば先に腰を下ろしている時だってあった。


___でも、教室では一言も話さない。
目は合うとこはあれど、言葉を交わすことは一切なかった。


それにどういう意図があるのかは分からないが、恐らく彼なりに気を使ってくれているのだろう。

だって、明らかに異性との距離が近づくと、同性の人間はまず最初に恋愛云々の関係を疑う。男だって女だってそうだ。


ひとりで昼食を食べる所や教室では特定の人間のそばにいる姿から、そういう話題が苦手なことを察しての行動だったとしたら…彼は気遣い力も計り知れないのか。












「…」



この奇妙な関係性が数ヶ月続き、馴染んできたからこそ気になってくる。


失恋をしたらそんなに気まずくなるものなのだろうか。

長い間ひとりでいることが当たり前になるようになるんだろうか。

彼の中で、件の失恋どう消化されているのだろうか。


あの縄で締め付けられるような感覚が無くなれば、彼とも普通に話せるようになると思う。
だけどそんな光景は全くもって想像がつかない。




食卓に出されたきゅうりの漬物を見て、彼のことを思い出すぐらいには気になっていた。

夕食にまで引きずってどうするんだ。

父と母がサッカーの試合に熱中しているのを尻目に、正面で味噌汁を飲んでいる兄さんに声をかけた。



「…兄さん」
「ん、どうした?」



___”最近話した子が失恋で幼馴染との関係がギクシャクしてて、それが影響して元気がないみたいで、私なんかとぼっち飯してるんだけどどうしてあげたらいい?”

とは、聞けないよな…

言葉にすると余計に私が悩む意味が分からない。



「…もし兄さんに異性の幼馴染と同性の幼馴染がいるとします」
「うん」
「同性の幼馴染と兄さんは同時に異性の幼馴染を好きになったとして、兄さんは残念なことにその恋は実りません」
「あぁ、実らないんだ」
「そういうときに発生する気まずさってどうしたらいいとも思う?」



父と母の歓声をBGMに兄は少しだけ宙を仰ぐ。
何度か瞬きをした後、ゆっくりとこちらを見た。



「そういうことなら、Aの方が詳しいんじゃないの」
「私が?」

「いるじゃん、幼馴染」



ドクンと僅かに心臓が跳ねた。



「…幼馴染、じゃない。ただの先輩だよ」



幼い頃のピアノ教室の、だけど。

9.幼馴染の定義→←7.彼は人間だったらしい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (126 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
515人がお気に入り
設定タグ:ボイプラ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 展開がまだ分からないんですけどワクワクしてます〜!更新停止中?みたいなのでしばらく更新ないのかもしれないのですが、気長に待ってます😌😌😌 (7月1日 0時) (レス) @page14 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナシノゴンベ | 作成日時:2023年3月29日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。