結論、これは恋ではない。 (ページ7)

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7.彼は人間だったらしいページ7

｢＿＿＿し、失恋…｣
｢うん、恥ずかしい話なんだけどね｣

開いた口が塞がらないとはこういうことだろう。
光のエフェクトを常に背負っているような彼が、失恋…

信じられない。

こういう人も特定の誰かを好きになって片思いをすることがあるんだと思うと何だか不思議な気分だった。

｢変な顔｣
｢…ごめん。その、そういう話題に…慣れてなくて｣

そういう話題でなくても、まず彼に慣れていないのでどういう言葉を選べばいいのか分からないのだ。

また静かになった空間で、彼がポツリと言葉を落とす。

｢幼馴染なんだ。俺の好きだった子もその子の彼氏も｣
｢…｣

＿＿＿しょ、少女漫画だ…

話があまりにも少女漫画過ぎる。
妙に緊張してきて、思わず固唾を飲んだ。

｢いつもはその幼馴染と食べてたんだけど…三人の間に別の関係性が作られると、意識してなくても前とは違う空気になってしまって｣

それぞれ清算する時間が必要だなぁって思って。
そう言って彼は笑う。

｢…｣

さっき彼は恥ずかしい話だと言っていたけれど、この話のどこが恥ずかしいことなんだ。

失恋は誰だってある。

あの兄さんだって失恋した時は私と同じく水揚げされた魚みたいだったし、気落ちすることは当たり前のことなのだ。

私の頭に断片的にしか残っていない彼はいつもと変わらないように思えた。

でもその裏では誰かに恋をして、そして失恋している。

｢ハンビンくんって、人間なんだね｣

自分の口を叩きつけるように塞いだ。
さっきから何なんだ、脳が回らないのか。
発言が馬鹿すぎる。

｢…？｣

虚をつかれたような顔をした彼が小さく首を傾げる。

｢えっと、どういう意味？｣
｢その、君って…人が出来すぎてるからそういう悩みはないんだろうなって、勝手に思ってて。あの…ごめんなさい、馬鹿なこと言いました｣

そういい頭を下げると、彼は申し訳なさそうに｢謝らなくていいよ｣と言ってくれる。

優しい…これが噂される所以か。

｢あー、そういう理由なら…何ヶ所か、教えます｣

でも完全に人が来ないわけじゃないから、期待しないでねと言葉を詰まらせながら言うと嬉しそうに笑う。

｢ありがとう、Aさん｣

本当によく笑う人だ。
そんなに綺麗に微笑まれたら、流石に目が潰れる。