4.ひとりの昼食と黒い瞳 ページ4
唯一の親友であるイナは、同じ中学で仲良くなった友達だ。
だけど一年生の頃は別のクラスだったことも影響して、私の昼食はいつも一人だった。
学年がひとつ上がっても一年間を通した習慣は変わらない。
イナは私を自分の友達のいる隣の教室に誘ってくれたけれど、友達の友達なんてどう考えても気まずい展開になる。
気遣いで誘ってくれたのに、それを台無しにするようなことにはしたくなかったのだ。
お世辞にも私は上手く喋れる人間では無いから。
学校の食堂はそんなに広くなく、人でごった返していた事もあってなるべく学食では食べたくなかったし、そもそも私の昼食は弁当だ。
どう考えても浮く。
かと言って、友達同士で集まっている教室の中、ひとりぼっちで昼食を食べる事もずっとは続けられない。
人の視線はよく刺さる。
特に一人でいる人間に対して、高校生という生き物は何の容赦もなかった。
だから、クラスメイトから席を貸してほしいと頼まれた時は正直感謝しかなかった。教室の外に出るきっかけになったし、昼食中にひとりになれる場所を探すいい機会になったからだ。
体育館裏だとか、ゴミ捨て場近くのベンチとか漫画や小説では悪い印象に書かれがちな場所には人が寄り付かない。
それに太陽だって直接当たらない日陰で、意外と快適に過ごせる。
一番のお気に入りは運動場の隅にある倉庫裏だった。
倉庫付近は木で囲まれており、木漏れ日がとても綺麗な場所だ。
隅にある倉庫というだけあって、わざわざ裏を覗きに来る生徒ほぼはいないし、あったとしても見知らぬ人が何も言わずに会釈していくだけ。
そこはまさに私にひとりの時間を与えるために作られたような空間だった。
そんないい場所だったからか、それが崩れるのも早かったが。
初めは冬。三年生の卒業式が間近に迫り、学校内の雰囲気がいつもに比べ落ち着いている時だった。
大きめのマフラーをひざ掛け代わりにして、ふと深呼吸をした時。ガサッと誰かが土を踏む音がした。
反射的に顔を向けると___目が、合った。
丸くて黒い目には見覚えがある。
入学してから何かと話題の尽きないクラスメイト、ソン・ハンビンくんだ。
先生や知らない人ならば動揺することはなかったのに、顔と名前を知ってる人の突然の襲来で心臓が口から飛び出そうになったことをよく覚えている。
少し驚いた顔をして何かを言おうとした彼に対して私が選んだ行動は、全力で逃げることだった。
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ぴ(プロフ) - 展開がまだ分からないんですけどワクワクしてます〜!更新停止中?みたいなのでしばらく更新ないのかもしれないのですが、気長に待ってます😌😌😌 (7月1日 0時) (レス) @page14 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシノゴンベ | 作成日時:2023年3月29日 1時