【WT】あまくてつらくてくるしくて。【短編集】

好きにならないよ、とか/荒船哲次 ページ10

連載再開おめでとうございます、お久しぶりです。
突然ですが人を選ぶ話です、嫌だと感じたらブラウザバック推奨。
久々に書いたのでヤマもオチもありません。





ああ、こちらの道に来るんじゃなかった。
華奢な肩を抱く犬飼を見て、今来た道を引き返そうと踵を返す。心做しか、歩くスピードは早い。
･･･さっきのは隣のクラスの青木さんだっけ。
たしか、成績は中の中で、顔はも中の上くらい。進学校であるうちの学校で中の中と言ったら一般的にはそこそこだけれど、平々凡々と言っても過言ではないと、思う。

朧気な記憶を手繰り寄せて、別の道でボーダーへと向かう。
あーあ、なんであの子なんだろ。間違いなく私の方が可愛いのにな。性格はこの通り可愛くないが、見た目はいい方だと自覚している。出なければ広報なんて務められない。

ねえ、青木さん、知ってるかな。
昨日肩を抱かれたのは私だったんだよ。耳まで真っ赤に染めちゃって。
純粋は面倒くさいから、すぐに捨てられちゃうかもね、かわいそ。

なんて。

｢･･･ばっかじゃないの。｣
｢誰がだよ｣
｢･･･っ、ビックリした。突然現れるのやめてくれる？｣
じとり。そう効果音が着きそうな目で荒船を睨むと、スマンと肩を竦めた。全然反省してないな。

｢で、誰が馬鹿だって？｣
｢犬飼｣
｢あぁ｣
成績はいい癖にな。
とか誤魔化して、さり気なく車道側を歩く。
この優男め、慰めるなら慰めてくれよ。虚しくなるだけなのに、口下手なんだから。

｢荒船も馬鹿だよね｣
｢うるせえな｣
ほんと、馬鹿だね。

たとえば私が、熱を孕んだ視線に気付かないような鈍感かつ純粋であったなら、お互い幸せだったのかもしれないね。
まぁそんなの理想論に過ぎないけど。
ごめんね、と謝ることはしない。そんなの残酷すぎてしまうでしょ、なら何も言わず笑ってれば良い。言い訳だけを積み重ねて、誰の気持ちも砂の城に溺れていく。

隣を歩く荒船を横目で見つめる。

ねえ荒船、私あなたのこと、好きになってもいいかもしれないね。もしそうなったらさ、馬鹿になるくらい幸せにしてくれない？


ブレザーに入れた携帯が、犬飼からのメールを知らせていた。

終わり ログインすれば
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