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甘くなかった筈なのに/三輪秀次 ページ9

「お、秀次じゃーん。元気してた?」
「…まあ、それなりには。」
「そっかそっか、よかったー」

自販機の横のベンチで座っていた後輩に、笑顔で手を振れば少し顔を歪めた。
うーん、嫌われてる。
そうおもって、胸がひどく痛んだ。

ガコン、と音を立てて落ちてきた缶コーヒーを手にとって、秀次の隣に座る。
少し距離を空けられた気がするけれど、しょうがないなと諦めた。

「この間遠征行ったらしいじゃん、どうだった?」
「特に変わりはありませんでした。」
「あー・・・そう。」
変わりは無かった、と言うより、よく見てこなかった、だと瞬時に理解した。
近界民の事を嫌いな彼が、詳しく見てくるとはどうしても思えないのだ。

「・・・どうしたんですか、最近」
彼の言っている事が何のことかすぐに分かった。
最近ボーダーに来なくなった。
理由と言えば、隣にいる彼への気持ちの自覚だった。

恋心を自覚すると、途端に会いたくなった。
けれども嫌われていちゃあ仕方が無いし、だから、忘れようと会わないように頑張っていたのに。
こんなところで会うなんて、全く私も運がない。

返答に少し悩んで、結局、なんでもないと軽く笑った。

「そうですか」
納得がいかないという表情だったが、聞き返してくることは何も無かった。

少しの静寂。
それが10秒だったか、30秒だったかは、わからないけれど。

「好きですよ」
「・・・は?」
「先輩のこと」
頭の中に疑問が浮かんだ。
なんで?どうして?
けれど、それを口にすることは無かった。

「わたしも、すき、」

手に持った缶からは、重さが消えていた。

好きにならないよ、とか/荒船哲次→←素直になりきれない俺と/荒船哲次



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設定タグ:ワールドトリガー , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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クロノト(プロフ) - ごめん犬飼アンタは一度くたばれ (2022年11月4日 19時) (レス) @page10 id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)
どろっぷ - おもしろかったです。 (2021年3月1日 21時) (レス) id: dcfe57966e (このIDを非表示/違反報告)
- もう、みんなかっこよすぎて・・・!リクエストで荒船さんもう一つおねがいします! (2019年1月14日 2時) (レス) id: f5704f71f2 (このIDを非表示/違反報告)
千夜(プロフ) - 2度に渡ってのコメントですみません…!もし可能でしたら二宮さん読んでみたいです!出来れば爽やかな感じのものをお願いしたいです。無理のない範囲で更新頑張って下さいね、これからも楽しみにしてます。 (2017年5月22日 18時) (レス) id: ac9a6d5f45 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん(プロフ) - 迅、さんっ!!!をお願いしたいです。こう、ハッピーエンドが見たいです。 (2017年5月22日 17時) (レス) id: b15935eff1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゅーくりーむ。
作成日時:2017年5月1日 21時

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