【WT】あまくてつらくてくるしくて。【短編集】

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バレンタイン、当日


隣のあいつの席には、たんまりとは言わないが少量のチョコ。
これを見るだけで妬く私は自分で自覚する位にはこいつに惚れこんでいる

放課後に渡す、そう一言LIMEを送って机に顔を伏せた


いつもなら集中して聞いている授業も右から左へと流れていく、待ち遠しくて仕方が無い

ぼけーっと聞き流しているとすぐに時間は過ぎた


「公平、本部いこ」
「おー」


「んでさー…」
「また太刀川さんレポートためてんの！？」
「昨日忍田さんに怒られてた」
「でしょうね…」
学習能力ってもんがないのかあの人は、そんな事を考えてしまうけど、頭にちらつくのはサブカバンに入ったマカロンの事。

何味にするかは大分悩んだけれど、チョコとピスタチオにした
お姉ちゃんに味見もさせたし完璧だと思う、思いたい



「あのさ」
「ん？」
「ほい」
「さんきゅ」
そう言って笑うこいつはやっぱりイケメンで、かっこいいなこの野郎

「お、今年はマカロンだ」
「意味知ってる？」
「おう…特別な人、だっけか？」
「知ってるんだ…意外」
「おい」
嬉しい？聞けば少し縦に動かした
…照れるんですけど！

「なあ、食ってもいい？」
「一つだけね、残りは家で食べなさい」
「…うま」
「ありがと」

そして私はこいつに一発かまそうと思うのだ


「こっちむいて」
「ん？」

身長差はあるけれど私が少し背伸びすれば届く距離

学ランの襟を掴んでこっちに引きよせる
油断していたこいつはされるがままに引き寄せられる

「んっ…」

一つキスを落として、耳元で「ごちそーさま」なんて囁いてやればいつものお返しは完了

「は、おまっ…」
「もらい」
一つマカロンを貰う、我ながらうまい

「…あーもう」
「公平」

キスのついでに一言言ってやる、普段は絶対に言ってやらない一言

「はいはい、今度はなんだよ」


「大好き、愛してる」

わずか数秒後、意味を理解したのか顔を赤く染めた

「俺の方が愛してるし」
「はいはい、公平私にべた惚れだもんね？」
「お前も人の事言えたタチじゃないけど」

はは、それもそうかも。

笑って公平は私にキスを落とした



(今年何個貰ったの)
(お前だけ)
(…断ったって事？)
(だってお前意外から貰いたくないし、誰かさんが嫉妬しちゃうみたいですし？)
(あほ、なんでそんなかっこいいんだ、すきだ)
(今日デレ期！？)
(うっさい、今後絶対言ってやんない)
(ごめんってー…)

気付かないフリをしても/風間蒼也→←恋って言うのは甘いらしい/出水公平

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