【WT】あまくてつらくてくるしくて。【短編集】

その愛はきっと/迅悠一 ページ2

彼女の寿命はあと少し。

病魔に侵された体は長く持たないと、医師から告げられたそうだ

予知は時に残酷で、俺を苦しめた

なんでお前の死に際を先に見なきゃいけないのか


「ねえ、あと何日もつ？」

私の計算だとあと1週間も持たないんだけど、そう笑って

なんで？なんで笑うの。


「…それ言ったら、どうするつもり？」

「んー何しようかな、ほら、行きたい所行きたいじゃない」

「お前は」

お前は、そう口に出そうとしてやめた



「ねえ悠一」

「何？」

「きっとね、綺麗な恋愛なんて一つも存在しないのよ」

「なんだよ、急に」

「人は汚れちゃうから。その都度汚くなって行くの

綺麗な恋愛なんて、存在しなくていいの」

Aの目から涙が零れた、それは綺麗で、儚くて。


「死にたくないよ、生きてたい、もっと、馬鹿やりたかったなあ


っ、やだ、しにたくない、しにたくないよ、わたしはまだ、いきていたい、

だって、そうじゃないと私、報われないじゃない、嫌よ、そんなの」

耐えられなくなって抱きしめる




「ねえ最後の罪、私に許してよ、悠一を縛りつけるのは私だけでいいの」




＿月が、綺麗ですね


彼女はそう言って静かに笑った後、うなだれた

徐々に冷たくなって体に、鳴り響く機械音



「…ずっと前から、月は綺麗だよ」

涙を零しながら、冷え切ったAの唇にキスを落とした



(愛で俺を縛りつけて


最後の罪は残酷だ)


(一週間なんて、嘘にも程があるよ)



(嗚呼神様、俺は貴方が嫌いだ)

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