それは甘い果実みたいな【 センラ 】

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AA様、〇〇店舗へ移行 と書かれた紙を先程渡されたばかりだ。詳しいことは皆の前で、と課長は笑顔で言って、そのまま去ってしまった。突然のことで私は頭が追いついてない。


「朝礼を行いますので、こちらへ集まってください」


毎朝恒例の朝礼は、いつもよりも緊張した。きっと、紙に書かれたことをいってくれるのだろう。……なんとなくだが、その紙が何を示すのかは分かっている。


「突然だがAは、一ヶ月後に会社を移行することになった」

その課長の声に、周りがザワザワしていることが分かった。えっ とか なんで とか諸々の言葉が耳に入ってくる。特に不快な気持ちは無い。

……やっぱり。この紙は文字ものままの意味を示していた。私の今の気持ち なんて考えてもなんとも表現ができない。とても難しい心情だ。

「成績が優秀なことから、ここより大きな会社に移行することになった。出世 と思ってくれたらいい」


ぱちぱちぱち とまとまりのある拍手と、課長の嬉しいお言葉 そしてこの空気に呑まれるように、ぺこり とお辞儀をする。嬉しいものだ。

だけど……

(移行先って、近畿地方なんだよな……)

ここ以外にも同じ会社があることも知っていたし、ここより大きな会社も沢山あることは知っている。兵庫県にあるここよりも大きな会社 そこに移行することになったのだ。


……彼に、会えなくなる。

拍手をしてくれている、身長が他の人よりも大きな彼と目が合った。


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