検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:24,163 hit

近い未来のお話 ページ11

偶に、これは夢なんじゃないかと想うことがある。君が手を差し伸べてくれた事も、君の笑顔も、君の体温も、全て都合の良い夢なんじゃないかと。両親の怒りに触れないように背中を丸めて身を潜めていた私の幻。







「A」


ぼーっとしていた意識が鮮明になる。朝日に照らされて照れくさそうに笑う君は、現実の君。ぼろぼろ涙が溢れてきて、慌てたように拭う君の指は暖かい。


「大丈夫!?痛いところとかある?」
「違う、違うの」


駄々っ子のように首を振る私に、困ったように眉を下げた君は大きな両手で私を抱きしめる。とくん、心臓の音が聞こえて、幻なんかじゃないと自分に言い聞かせた。


「私、こんなに幸せで良いのかな」


君の体温に包まれて目覚めて、君と同じ朝日を浴びて、君とご飯を食べて、君と同じ時を過ごして、同じベッドで眠って、君が私を好きでいてくれて。


そう言ったら、君は嬉しそうに笑った。良いに決まってるなんて、口付けと共に言葉を贈ってくれた。


「僕ね、Aことが好きなんだ」
「私も、順平君が好きだよ」
「うん、だからさ、」


僕と同じ苗字になって。


数秒、沈黙。言葉の理解にかかった時間は約3秒。その間に止まっていた涙は理解した途端、また溢れ出す。さっきよりも、勢いがいい。


「私が、君の苗字を名乗っていいの…?」
「うん、嫌?」
「ううん、嬉しい」


ちゅ、重なった唇はいつも優しい。ふと、繋いでいる手に違和感を感じた。左手の薬指に固い感触。これは、と思わず君を見ると、悪戯が成功したと言わんばかりの顔で、君もお揃いの指輪を撫でた。


「明日、一緒に婚姻届を貰いにいこう。それと、先生と悠仁たちに挨拶も行かなきゃ」
「君のお母さんにも挨拶しなきゃね」
「うん、多分草葉の陰で酒盛りでもしてるよ」
「喜んでくれるかな」
「喜ぶに決まってるよ。だって、僕が選んだ君なんだから」




いつまでも手を繋いでいよう。離れ離れにならないように、お互いを見失わないように。辛い時も、嬉しい時も、死ぬ時も、絶対に放さない。


君は僕だけの人だし、僕も君だけの人。お互いが唯一無二の存在。かけちゃダメだよ。いつまでも、いつまでも、


お互いを呪いあって生きていこう。

少し遠い未来でのお話【前編】→←愛しの君から見た君



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
63人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 吉野順平   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- もう最高すぎです。読んでて胸がいっぱいいっぱいで、自分に重ねてしまいました。言葉選びも胸に刺さります。泣きそうでしたが、書いてあった「人工呼吸」を聴いて号泣しました笑 (2021年3月28日 16時) (レス) id: 5a8be2f728 (このIDを非表示/違反報告)
海夜海月 - 最高です。泣きかけました。これからも頑張ってください。 (2021年3月24日 1時) (レス) id: 6a4cb75c85 (このIDを非表示/違反報告)
エタニティ(プロフ) - 一気に全部読んじゃいました。この作品に出会えて幸せです! (2021年2月23日 15時) (レス) id: 5dea0f434c (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年1月21日 23時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 最高です! (2021年1月19日 0時) (レス) id: b3889a91c4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月16日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。