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「恐らく虎杖が戻って来たのはAが手をかける前だ。だからあいつは虎杖を殺してなんか、」
「そんなの分かってるわよ」
釘崎は小さな声で言う。
「あの子は確かに人間らしさとか、感情的に動くとかそういうのが欠けてる。でも根本は優しい、心も綺麗な子だってあった時から分かってる。あんなに綺麗な目をした人を見るのは初めてだもの」
伏黒は黙って聞いていた。
「だからこそ、言い訳もしない、誰のせいにもしない、あんな風に一人で全ての責任を負おうとしてるあの子が気持ち悪いのよ」
「アンタだって思うでしょ。あの子の、Aの友達は虎杖だけじゃない。私とアンタだってAの友達なの」
「……………そうだな」
「友達なら、その罪だって背負うべきでしょ。宿儺を止められなかったアンタだって先に病院に行った私だって、形はどうあれ虎杖を殺したようなものなんだから」
そよ風が二人の間を駆け巡る。
僅かな風は草木の匂いを運んだ。涙の匂いも一緒に連れて行った。
少ししてから釘崎は立ち上がる。
「……………私も言葉が悪かったわ。今度謝るから、アンタも一緒に謝りなさい」
「………そうする」
「おい!お前らいつまで休んでんだ!早くこっち来い!!」
グラウンドの中心から真希が二人を呼ぶ。
休憩時間は終わりだ。後悔も懺悔も終わりだ。
死者が生者を笑うのが許されぬように、生者は立ち止まることは決して許されない。
彼らは前に進むことしかできないのだから。
伏黒と釘崎は、固く拳を握りしめて、力強く足を前に踏み出した。
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佐藤れい(プロフ) - 林檎さん» 感想ありがとうございます…! とても嬉しいです、まだ明かされていないことも多くてむず痒い点もあると思いますが、それも込みで今後も楽しんでいただけると嬉しいです! これからもよろしくお願いします! (2020年11月28日 10時) (レス) id: 4f8cc240de (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - こんな夢主ちゃん待ってました。すごく面白いです。シリアスが儚い雰囲気の夢主ちゃんにぴったりで素敵です。更新頑張って下さい、応援してます。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: 67c87e380d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤れい | 作成日時:2020年11月22日 18時