Trickster ページ14
「………」
まだ。まだ届かない。
俺は、あの人の見てる景色が分からない。
あの人が望むものが分からない。
だって、はーちゃん先輩なんも言ってくれないんだもん。
「明星」
「あっ、ホッケ〜!」
「急に走って行ったから、俺も遊木も転校生も驚いたぞ」
「明星くんが凄く焦った顔したからね〜。
どうかしたの?」
「…んーん!ちょっと知り合いに似た人がいて!
ごめんごめん。さっ、案内に戻ろっか☆」
ホッケ〜もウッキ〜も知らない先輩。
アイドルに誰よりも真剣な先輩。俺の憧れの先輩。
…はーちゃん先輩。俺、まだ覚えてるよ。
はーちゃん先輩が語ってくれた夢。
きっともう、叶える気はないと思う。
覚えてすらいないんだろう。
だから
だから、俺は。
俺は、はーちゃん先輩の語る夢が好きだったから。
俺がその夢も叶える。
だって俺たちはアイドルだもんね。みんなに夢を与えるなら、夢を持つ感覚も分かっとかなきゃ。
「…俺が拾っておくから」
また、持つ気になったなら、俺の元に来てね。
俺がそれまで、ずっと持っておくから。
ねえ、捨てないで、はーちゃん先輩。
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作者名:右脳54% | 作成日時:2019年6月25日 21時