バスケとケンカと、はじまる恋と。【青峰大輝】

31 無力の再確認 ページ35

黄瀬side





「！な、に、」







ギュッとオレが抱き締めれば、
びっくりしたソイツはオレから逃げようとする。






逃がさないように力を強めた。









細すぎて今にも折れてしまいそう









「な！…っんで、」









なんで？なんでって…だって、









そうやってなんでも抱え込んでしまいそうなアンタを見ているのが、









なんだかとても辛くて、









桃っちの気持ちが少し分かった気がする。









.









.









「A、A落ち着いて」


「…あっごめん、ごめ……っなさいごめんなさい」


「うん、大丈夫。大丈夫だから。落ち着いて。オレに呼吸合わせて。」









そう言うと、ヒューヒューと喉を鳴らしながらもゆっくりと呼吸が落ち着いていく。









その代わりに聞こえてきた嗚咽に若干びっくりする。









だって、青峰っちと言い合ったり、桃っちと喋ったりしてる普段のAからは、









泣いているところなんて想像出来なかったから。









「……ぁおれ、おれが悪くて、」


「うん」


「…おれ…っの所為で…っぁ黄瀬さんが、みんなが…っ！ごめんなさいごめんなさい…ぁごめんなさい」


「違う。違うよ。これはAの所為じゃない」


「……………おねが、…っゆる、して」


「うん」









無意識にAを抱き締める手に力が入る。
Aの震えた声を聞いてたらオレまで泣きそうになってきた。









Aは、助けて、と叫んでいるように見えた。









なんで血が止まらないんスか？









なんで今日辛そうだったんスか？









どんな夢を見たんスか？









なんでそんなに泣いているんスか？









なんで一人称が突然"俺"になったんスか？









.









聞きたいことは沢山あるけど、

とりあえずAの背中をさすり続けた。









.









.









オレに出来ることは、

それしかなかった。

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