第十一話 愛する者との別れ ページ12
幼子は母の嘘に気づいているのか離れたくないと駄々を捏ねるようにひたすら母を抱き締め離そうとはしない
「ねぇアリス、この世界で一番素敵なことはなんだか分かるかしら?」
「んと、大好きな人と一緒にいること」
「そうよ。でももうアリスも8歳になったわ。これから沢山学んで大人になっていく。だからこれも覚えておくといいわよ。この世界で一番素敵なことはね、愛する者と共にいることよ。アリスもすぐに大きくなるわ。その時恋をして、女になるの。魔女も人間もユーグスタクトも同じ、成長する生き物よ」
「…?」
まだ言葉の意味が理解できなかったのかきょとんと首をかしげる娘に母は優しく笑う
「ふふ、まだアリスには少し早かったかしら?……ねぇアストリッド、ママはアストリッド・ユーグスタクトを心から愛しているわ」
「ママ…?」
母は自分のことを滅多にアストリッドとは呼ばない。いかなる時もアリス、アリスと愛称でと呼んでくれていた。
少女は幼いながらも賢かった。その小さな身体の内に収められた永い歴史が自分に告げてくる。忘れるな、これが最期になると。しかし、莫大な力をまだ制御出来ていない少女には漠然としかその事に対して理解が出来ず、しかしこれが自分への最後の言葉になるであろう事をなんとなく理解してしまった。
「ねぇ、いつまでも忘れないでね…ユーグスタクトの誇りを、アストリッド・ユーグスタクトの誇りを、あなたがあなたであることを。愛しているわ、アストリッド・ユーグスタクト」
「アリスも、アストリッドも、ママのこと、愛している…だから行かないで…アリスの前から、いなくならないで…」
「それはできないことよ、さぁアリス。もう寝なさい。」
「…ぃや」
首を振りさらに母にしがみつく
「我が儘はだめよ、アリス」
「ぃや…いやぁぁ、いちゃいやぁ!」
丸い瞳に大粒の涙をためアストリッドは母の胸に顔を埋めた
「もう、アリス泣かないの。ユーグスタクトがこの程度で泣いてはだめよ?それともアリスはユーグスタクトじゃないのかしら?」
「…違うもん…アリスは、立派なユーグスタクトの魔女だもん」
「じゃあ泣き止んで?」
「ん…」
小さな拳でゴシゴシと目を擦り、母を見上げる。
「アリス、ユーグスタクトだから泣かないもん!」
「えぇ、立派よ。愛しているわ、アストリッド」
母はそっと娘を抱きしめ額にキスをすると立ち上がり使者に目で合図を送る
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ストゥアート(プロフ) - 昔少女さん» コメントありがとうございます。更新頻度は遅いですが、楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2017年10月22日 14時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
昔少女 - あなたの生み出す想像の世界を私も漂っています。 (2017年9月17日 15時) (レス) id: f6820b1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
ストゥアート(プロフ) - エリザさん» ありがとうございます。今週は期末試験期間なのでほとんど更新ができませんがこれからもよろしくお願いします。 (2016年7月25日 20時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
エリザ - 更新まっています(^_^)/~ (2016年7月25日 11時) (レス) id: fa956406d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ストゥアート | 作成日時:2016年7月4日 21時