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学校は夏休み。
日々撮影三昧だ。
今は6話の撮影。
今日は大知とのキスシーンもある。
台本のそのシーンのページを見ると思い出されるのは。
―――お前、ムカつく。
そう言って私の唇を奪った櫻井先生。
先生は何で私なんかにキスしたの？
悪いだけじゃ分からない。
そこで責め切れなかった私も私なんだろうか。
「Aちゃん」
陽南乃さんが私の隣にやって来た。
すると耳のそばで。
「翔と何かあった？」
「えっ？」
ページをめくる手が止まる。
「智が私にそう言ってこいって言ってきて。理由は教えてくれなかったんだけど」
あの後大野先生は櫻井先生に会ったのだろうか。
あの珍しく動揺した先生に。
「何もないですよ」
こう言うしかない。
月までに留めておきたかった。
「本当に？」
「はい。何かあるわけないじゃないですか。先生と生徒の間で」
言い聞かせるしかない。
自分と先生の間には踏み込んではいけないラインがあるということを。
「まあ……それはそうね」
こう言って陽南乃さんは離れた。
先生を好きになるのはやめた方がいいと言うあの人に本当のことを言えるわけがない。
「陽南乃さん最近よくAに声かけてくるね」
次に話しかけてきたのは潤くん。
「陽南乃さんうちの学校のOGで先生の同級生だから……だと思う」
「へえそうなんだ。先輩じゃん」
潤くんと話していると波立つ心が安定する。
本当に気の置けない友人だ。
「今日キスシーンか。お前とそういうのやるの何回目よ」
「3回目かな」
「そんなか」
初共演から年に1回は共演する間柄なので、当然二人のそういう絡みもあった。
「だからネットニュースに交際疑惑って書かれるんだよね。違うのに」
「……迷惑な話だよ」
「ねえ」
そのおかげで学校では完全に潤くんファンを敵に回している。
まあ味方なんて片手で余裕で数えられるほどしかいないけど。
友達だと言っているのに誰も信じやしない。
潤くんは何で私といてくれるんだろう。
私と話してても仕事面でプラスになるぐらいだろうに。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2018年7月18日 9時
