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そのシーンは放課後の生徒会室。
以前大知に塚本先生への想いを指摘されたために、花蓮にとって大知は唯一塚本先生のことを話せる人物なのだ。
大知「花蓮どうしたの。なんか嬉しそう」
花蓮「……塚本先生がね、私の武術するところかっこいいって言ってくれてね」
普段大事なとき以外あまり喋らない花蓮が彼のことだと冗舌になる。
大知「……へえ」
花蓮「それで塚本先生私が生徒じゃなかったら付き合ってるかもって……」
大知「そんなんで喜んでるのかよ」
花蓮「そんなんって……」
大知「塚本はお前の気持ちを知っててそんなこと言ったんじゃないの。お前が生徒の時点で脈ナシだろ」
大知は花蓮に振り向いて欲しくてキツイことを言う。
それが逆効果だとも分からず。
花蓮「塚本先生を悪く言わないで。あと川田くんに何が分かるの」
花蓮は自分の恋心を馬鹿にされたんだから言い返す。
大知「そうだよ分かんねえよ。塚本のどこが良いのかとか。だけどそれはお互い様だろ？お前は俺を分かってないだろうし」
花蓮「……川田くんのこと？そういえば川田くんは誰が好きなの？岩永さんがあなたのこと良いって言ってたよ」
ここで先生に指定したシーンは終わりだ。
なのに。
「お前、ムカつく」
先生は次の大知の台詞を言った。
そして立ち上がって私の顔に近付く。
櫻井先生の唇と私のが重なった。
あまりの突然の出来事に私は先生の顔をまじまじと見てしまう。
その秀眉な顔に自分の耳が赤くなるのが分かった。
ゆるゆるとただ重なり合うだけのキスは初めての私に心地良さを与えた。
先生の唇が離れる。
そのときの瞳は初めて見る類のモノでもっと見たいと思わせる。
しかしその瞳はすぐに開かれた。
「先……生？」
「わ……るい」
そう言って椅子にガタンと座る。
大きな目をぱちくりとさせて何かをしでかしてしまった子供のように見えた。
このとき疑問をぶつけることが出来たかもしれない。
だけど私はそれをしなかった。いや出来なかった。
先生は自らの絶対領域を私に踏ませた。
「……帰りますね」
私のその言葉は先生に届いていないようだった。
私は英語科準備室を出て、すっかり暗くなった廊下を早歩きで進む。
私の3年生の1学期最後の日。
きっと月だけが私達の出来てしまった秘密を見ていた。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2018年7月18日 9時
