月水晶２【S.S】 (ページ16)

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「そういえばさ、飯塚」

「はい」

「文化祭どうすんの。出る？」

今学校は文化祭の準備に追われている。
文化祭は来週末。
だけど私はクラスで浮いているから準備を手伝わなくても誰も何も言わない。

「仕事はないですけど……」

一般人に晒されるのは事務所的にNGだろうと思う。

「まあ2日目の一般公開は駄目だろうな。でも1日目の関係者公開は大丈夫だろう。3年最後の文化祭だ。二宮にひっついてるでもいいし、何なら俺と一緒に見回りする？」

私はいつも先生にそう言われて行事に参加してきた。
仕事がない限り。

「事務所に聞いてきますけど……参加します」

「そうこなくちゃね」

先生は笑顔を見せてくれる。

夕日が私たちを照らす。
この景色を私は一生忘れないだろう。

先生の腕時計を見れば雅紀くんのお迎えの時間だった。

「先生、私そろそろ……」

「そうか。明日は？」

「来られます」

「うん。じゃあ気をつけて帰れよ」

「はい。さようなら」

私は屋上を出る前に振り向いて先生の背を見た。

先生には唇しか触れたことがない。
なのにその背に無性に抱きつきたくなったが、抑えた。
絶対領域に踏み込んじゃいけない。

扉を閉める。

先生がこのとき何を思ってたかなんて知る由がない。

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