山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ13)

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Question-9 ページ13

9話～目的地～

「...しかし、大分歩いたな。
もう見える景色がまるで違うし」

２人の左右はいつのまにかうっそうと茂った森が広がっており、
もはや進むか戻るかの単純な一本道になっている。

いよいよもって、目的の場所も近付いてきたようだ。

「それで、小屋があること以外は何か聞いてないのか？」
「...え」
「いや、その事件に遭った生徒からだよ」
「うーん...他に何か...
あっ、その子は小屋の中にいたところまでしか記憶がなかったみたいなんだ」
「小屋の中か...」

ポツリ

「...ん？」

何かが目の下に触れる。
空から降ってきた、冷たい水滴...？

「マズいね」

足元の土が色んなところで円形に黒く染まっていく。
見ているうちに耳を通り抜ける音もサーといった感じに変わっていく。

「やっば！結構降ってきやがった！
急ぐぞ！このままじゃ風邪引いちまう！」
「うん、そうだね」

随分周りが薄暗くて危ないが、
冬の雨はあまりにも身体に悪い。
蕗は望を先導するように前に出て走り出した。

～約1分後～

「...もしかして、小屋ってアレか！？」

蕗の目線の先には自然に存在するには不自然な何かがあった。
よく見えないが、色はおそらく茶色。

「きっとそうだよ！
違っても雨はしのげるだろうし！」
「よっしゃ！」

足の痛みも忘れて走る。
今はそのことしか考えられない。

「間違いない！小屋だよ！」

望が光る眼を使って照らし出したのは紛れもなく"小屋"だった。
雨宿りのできる場所であり、今回の目的地。

ここで何か分かるのだろうか。
いや、ここに今までの疑問を結び付けてくれる"何か"があるのだろうか。

蕗の心は高鳴っていた。