17話 ページ19
Aside
嗅ぎなれた紙とインクの匂いがする
ゆっくりと目を開けると、本で溢れかえる見慣れた景色に少し安心した
それと同時に、夕方に見た今にも泣き出しそうな、隠しきれない喜びを目に宿していた弟の顔を思い出した
ふつふつと罪悪感が込み上げてくる
違う、違うんだ
私は、貴方にそんな顔をさせたいたい訳じゃなかったんだ
ぼんやりと視界がぼやけていくのを感じた
本当はずっとあそこに居てもいいかなって思っていたのだ
何故って、私が原作が終わらないうちに介入してしまったから
無限にある可能世界の中でも、原作通りに事が進む世界は何千、何万とある
多少の不純物や誤差があろうが、大抵は本来あるべき様に進んでいく。世界とはそういうものなのだ
だが、目下の問題は今私の居る世界線だ
そもそも鏡花ちゃんがこの異能図書館に紛れ込んでしまった時点で半分アウトだったのだ
その時点で大まかに私が此処に籠り続けた場合の世界とヨコハマに帰ってしまった場合の世界の2パターンが出来てしまう
今、私が居るのは帰ってしまった場合の中でも"治に姉が生きていることを知られた"上で此処に帰ってきた場合の世界線
この"治に姉が生きていることを知られた"という事が重要なのだ
これにより、この世界が"原作世界の枠"から外れた可能性がある
此処に籠ると決めた時は原作から外れたらどうなるかわからなかったけど今は違う
この12年間、此処で無限に存在する可能世界を管理し、見てきた
滅茶苦茶なことをしなければある程度は原作とズレても問題ないことは解っている
私の予想では恐らく今私が居る世界は原作世界の枠から外れているが、そこまで大きく外れた訳では無いと思うのだ
だから、その証拠を見つけさえすれば
あの子の傍にいてあげられる
だからごめんね
もう少し、あともう少しだけだから
待っててね、治
私は気合いを入れる様に両手で頬をパァンと叩く
思考を進めながらも運んでいた足はとあるフロアへ辿り着き止まった
『さて……これは長期戦になりそうね』
そこも他のフロアと変わらず、本が無限に並べられている
唯一違う点というとその本は"全て同じ本である"ということくらいだろうか
──そこは無限に存在する各パラレルワールドの歴史を綴る"白紙の文学書"のみが並べられた場所
本来ならばこの無限に存在する可能世界の中から自分が今居る世界のものを見つけ出し、本当に原作から外れたか確認しなければ彼処には帰れないのだ
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朱音(プロフ) - 雪月さんありがとうございます!ひぇ……好きだなんて……!!めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2020年11月9日 7時) (レス) id: 7033fb4795 (このIDを非表示/違反報告)
雪月 - メッチャ面白いですね!好きです…!更新待ってます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 75d6b88503 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱音 | 作成日時:2020年10月17日 18時