18話 ページ20
つまらないなぁ
だってどうせ全部知ってるんだもの
予測する必要だってないし
つまらないことこの上ない
思わず欠伸をしてしまった
呑気だねえ……という太宰君の声が聞こえたがつまらないものはつまらないのだ
広津さんが中原君の胸元に手を当てると同時に、持っていた太刀を静かに持ち直した
広津さんが異能を発動し、中原君と太宰君が後方に吹き飛んだ
おーおー太宰君綺麗に蹴飛ばされてるね
広津さんは何やら焦っているが、私はお構い無しに中原君の方へ突進した
『異能力 黒の裾──"汚れっちまった悲しみに"』
走りながらその場にある瓦礫に触れて浮かせた
そして、弾丸さながらの速度で中原君に放つ
横向きに着地した中原君は驚きつつも異能と体術を駆使して捌いていく
勿論、最初からこれだけで中原君に通用するとは思っていない
その間に気配を消して中原君の頭上に回り込み、背中付近に峰打ちを叩き込む
中原君が地面に落下しきる前に壁を蹴って太宰君達の方へ後退した
太「綾ちゃんナイスタイミング!」
『そっちは大丈夫?』
太「嗚呼、なんとかね」
中原君に蹴飛ばされていた太宰君が私の方に声をかけた
広津さんは私を見つめてポカンとしていた
まあ初めて見たらそうなるよね
こんな年端もいかない少女が大きめの太刀を振り回して俊敏に動いているんだもの
中原君が土煙の中からゆらりと立ち上がった
中「手前も重力使いか……!」
やっぱりそう来るよね
でも残念
『……違う』
私の異能は重力のみを操れる訳では無い
異能の模倣も出来ないことはないけれど正確には模倣している訳では無い
使い方によっては危険だし、特務課に目をつけられたくもないから情報収集以外で活用はしない予定だが
中原君は一瞬訝しげな表情をしたが、直ぐに口元に猛獣の様な笑みを浮かべた
中「どっちにしろ、お前らが殺される運命は変わらねえ!宴の開幕に相応しい花火を上げようぜ!」
その言葉と同時に中原君が真っ直ぐ此方に突っ込んでくる
次の瞬間
黒い炎が全員を水平に吹き飛ばした
咄嗟に異能で風の壁を作って炎と着地の衝撃を軽減する
他の人達は殆どが衝撃波を叩きつけられ、吹き飛ばされていた
人だけでなく、建物、電柱、木々などあらゆるものを薙ぎ払っていく
太宰君が「──先代──!」と叫ぶ声が聞こえたその瞬間
一瞬だった
ほんの一瞬だけ
黒い炎の中で平然と立つその人──先代と、目が合った様な気がした
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作者名:朱音 | 作成日時:2020年10月11日 18時