色彩不明【文スト】 (ページ19)

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17話ページ19

広「ふむ。重力か」

広津さんは右手の白手袋を脱ぎながら云った

その優雅な仕草に、この状況にも関わらず流石広津さんだと思った

広「なら《羊》の小僧。公平を期するため私の異能も教えよう。私の能力は掌で触れたモノに強い斥力を発生させる」

中「はは。自分の異能を教えるとは、フェアプレイ精神に溢れたマフィアだ」

中原君は笑っていた

私は随分と余裕だなと眺める

中「だが、こっちに敬老精神を期待するなよ」

広「不要だ」

原作の時代である7年後でも現役でマフィアやってる広津さんだ

敬老精神など不要どころの話じゃないだろう

広津さんが白手袋を無造作に投げつけ、中原君との戦闘が始まった

ふむふむ……中原君は結構空中での攻撃が多いのね……

あれだけ空中で動けるならわざと空中に飛ばせるのは悪手になるね……

中原君の動きの癖を読んでいると、中原君は後方に飛んで軽やかに着地した

中「流石はマフィア……と云いてえが、どうにも乗らねえな。慥かに俺の異能と相性が悪すぎだぜ、ジイサン」

そうだね、相性はすこぶる悪い

相性だけはね

広「心配は不要だ、お若いの。異能の強さが勝敗を決める──若い頃は私もそう信じていた。命という授業料を支払わずにその間違いに気付けたのはまったく幸いだった。その意味で、君を不憫に思うよ」

中「面白え」

中原君がにやりと笑って、広津さんに突進していく

『……太宰君、広津さんの前、右2』

太「了解」

私がボソッと呟いた瞬間、太宰君が動き出した

それから1、2テンポ遅れて広津さんが中原君の肩を掴んだ

広「捕まえたぞ」

中「だから何だ？アンタの異能は効かねえ」

太「どうかな」

中原君が驚いた顔で振り向く

着地したすぐ背後に太宰君が立ち、中原君の首筋に手を当てている

太「残念。これで重力は君の手から離れた」

太宰君の異能は"あらゆる異能の発動を阻害し、無効化する"

その無効化に例外はない

太宰君はニコニコしながら云った

太「流石綾ちゃんだね。指示完璧だよ」

広津さんが中原君を捕まえる直前の呟きは太宰君への位置の指示だ

動きの癖までは見切れなくても、大方の位置予想くらいならなんてことない

……つまらない