０７私の楽しみ ページ7
毎週火曜日と木曜日の放課後。
「こんにちは」
私はあの公園で大神先輩と会う。
放課後の密かな楽しみだ。
遊具があるわけでも広いわけでもない公園。
場所も目立つところでもなく人はいない。
「おう、来たか」
決まって先輩が先にいる。
待たせてはいけないと私も急ぐが
必ず先輩が先にいる。
「今日はギターの練習ですか？」
いつも楽譜を見ているかギターの練習のどちらかだ。
今日はギターの練習らしい。
先輩が手に持っているギターは
兄が持っていたものにそっくり。
「今度のライブで演奏する予定でよ」
連絡先は知らない。
先輩はアイドルで私は一般人だ。
毎週会えるだけで十分、
それ以上は望まない。
望んではいけない。
昨日何食べたや今日見たもの、
そんな他愛のない会話。
３０分ほど話しておしまい。
「…そろそろ帰りますね」
切り上げはいつも私から。
「おう、気ぃ付けて帰れよ」
先輩となら何時間だって話せる。
ずっと一緒にいたい。
「はい、また」
でも一緒にいる時間が長ければ長いほど
会えない時間が苦しくなるから。
終わりを決めている。
「なぁ」
「…はい？」
いつものように帰ろうとしたその時。
先輩に声をかけられた。
なんだろう？
「今度学内でライブすんだけどよ。
良かったら、あー…」
「先輩のギター、聞かせてくれるんですか？」
どうしよう。嬉しい。
心臓の音がうるさい。
アイドル科では学内限定ライブが
定期的に開催されている。
他学科の生徒も見ることができるのだ。
告知は学内で度々見かけるが
足を運んだことは一度もなかった。
「…絶対行きます」
アイドルの彼が見たい。
ずっとギターを見ていた先輩が
私の顔を見た。
ばちっと目が合う。
「とっておきの演奏聴かせてやんよ」
とびきりの笑顔でそういった。
金色の瞳に吸い込まれそうになる。
すごくまっすぐで、眩しい。
太陽のような人だ。
続く
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作者名：りんごあめ | 作成日時：2023年8月31日 1時
