０６痛恨のミスからの ページ6
キーンコーンカーンコーン
終業のチャイムが鳴る。
放課後だ。
今日もいつもと同じ。
「またねー」
「部活行こうぜー」
クラスメイトが楽しそうな声が聞こえる。
私は鞄のチャックを閉め、扉に向かう。
地元の高校だが私に地元の友達はいない。
中学は別の地域の学校に通っていた。
「……」
靴箱に向かうため長い廊下を歩く。
１人が嫌いなわけではない。
「駄目だよ怒られちゃう」
「いいじゃんイケメン拝みたいの！」
靴箱で靴を履き校舎の外に出たとき、
そんな声が聞こえた。
女子生徒２人組。
２人が見ているのはアイドル科の校舎。
たくさんの学科がある夢ノ咲だが
アイドル科はなにもかも特別扱いである。
道路を挟んだ向こう側。
そこにアイドル科の校舎がある。
出待ちは校則で禁止。
普通科の生徒はアイドル科の敷地に
入ることはできない。
ばれたら反省文だとか。
つまり大神先輩と学校では会えない。
「あ」
そう、会えないのだ。
すっかり忘れていた、何やってるんだ私は。
……もう帰ろう。
日傘をさし学校を出る。
この日傘は家にあったストックだ。
風に飛ばされてしまった日傘は
結局見つかっていない。
…お気に入りだったのになぁ。
ふらふらといつもの調子で歩く。
夏を感じさせる青空にいつもの道。
もう少しで昨日の公園が見える。
もしかしたら。
そんな期待を胸に抱く。
少しだけ、少しだけ待ってみよう。
「あ」
公園に入ってすぐ。
期待は現実に変わった。
彼…大神先輩がベンチに座っている。
昨日と同じ場所。
都合のいい夢ではないだろうか。
幸い先輩は楽譜に集中してこちらに
気づいていない。
引き返すなら。声をかけるなら。
今しかない。
「先輩、こんにちは。また会えましたね」
いつの通りに。
「おう、昨日ぶりだな。体調は大丈夫かよ」
「はい、おかげさまで」
先輩が持っているのは楽譜。
隣には大量の楽譜が入っているのであろう
ファイルが置かれている。
「先輩はいつもここで楽譜を？」
「あー、まぁ…たまに」
「そうなんですね」
会えた。目の前に先輩がいる。
それだけで胸がいっぱいだ。
「また、来てもいいですか？」
「……勝手にしろ」
答えはイエス、ということだろう。
嬉しい。また会える。
「…火曜日と木曜日」
「え？」
「その２日だ。それ以外の日は行けねぇ」
心臓の音がうるさい。
こんなの初めてだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りんごあめ | 作成日時：2023年8月31日 1時
