０５兄と私と ページ5
「人間っぽくないんじゃない？」
ぐるぐると考えていた時、そんな言葉が降ってきた。
ニカっと笑う兄に目をそらす。
「凛月兄に言われたくないんだけど」
「みんなAのこと神様か何かだと思ってるんでしょ。
嫌だねぇ…俺たちは
「……。」
全部。
全部呪われたこの朔間の血のせいだ。
誰も本当の私を見てくれない。
みんな私を腫れ物のように扱う。
何度この顔を恨んだだろう。
「…でも大丈夫だよ。
Aもきっと良い人と出会えるから」
「まーくんみたいな、とでも言いたいんでしょ」
「当たり〜♪」
ぱっと空気が軽くなった。
まーくん。衣更真緒。
近所に住む私たち…いや凛月兄の幼馴染だ。
まーくんが世界をくれたんだ、と。
実際兄は真緒くんと出会い、変わった。
本当に、わたしなんかにそんな人が
現れるのだろうか。
「ほら、そんな暗い顔しないの。
大切なのは笑顔だよ、アイドルの基本」
「私アイドルじゃないけど」
「細かいことは気にしないー」
じゃあ俺、部屋戻るからと言い、
兄はリビングを出た。
薄暗いリビングに１人残される。
現在、両親は海外にいる。
親戚がどうとかこうとか言っていた。
もう１人の兄は家に帰らない日がある。
それは校則的にどうなのか。
「ふぅ…」
特に何もすることもなくソファに身を預ける。
そして今日の、先程の出来事を
思い出していた。
眩しかった。
野生動物のような、太陽のような人。
大神晃牙、先輩。
兄に彼のことを聞けばよかった。
同じ学年だ。
名前ぐらいは聞いたことあるはず。
最悪真緒くんに聞けばいい。
でもまた会える、そう確信している。
彼にもう一度会いたい。
いっそ会いに行ってしまおうか。
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作者名：りんごあめ | 作成日時：2023年8月31日 1時
