101 書類 ページ1
溶けそう。
どうしてこんなにも生きづらいのだろう。蝉の声がうるさい。耳がとても痛い。
「休憩するか？」
『…そうする』
夏休み。
ここは夢ノ咲学院アイドル科の校舎にある生徒会室。今日はお手伝いとしてここにいる。スポドリなど運ばされるのかと思いきやどうやら違ったらしい。予算の確認などの仕事ばかりだ。
「…本当に悪いな、A。夏休みの生徒会は人が足りないんだ」
『確かに人が少ないね』
生徒会室にいるのは私とアイドル科生徒会副会長の蓮巳敬人…敬人兄のみ。人が少ないにしてもこれは少なすぎではないだろうか。
「Aちゃん、蓮巳先輩、お疲れ様です。飲み物持ってきました」
生徒会室に入ってきたのはジャージ姿のあんず先輩だった。彼女は来年度から新設されるプロデュース科の生徒だ。
『ありがとうございます…！』
「助かる」
先輩からスポドリを受け取る。冷たい。
「…普通科の生徒はどうだ」
「皆さんすっごく頑張っていますよ。揉め事も無いですし」
敬人兄の言葉に笑顔で返す先輩。その言葉を聞いて少し安心した。でもまだ１日目だ。
「何かあればすぐ報告してくれ」
「分かりました。じゃあ私、行きますね」
そう言うとあんず先輩は生徒会室を出た。忙しそうだ。私もなにか手伝えればいいのに。少しでも先輩の力になりたい。
「何か心配なことでもあるのか」
『ううん、大丈夫。さて、今日の分頑張って終わらせるね』
今は目の前の仕事に集中しなくては。先輩から頂いたスポドリを机に置き背伸びをする。書類仕事は慣れっこだ。
「…」
1枚1枚書類に目を通す。こういう仕事は先生がするものだと思っていたがアイドル科では生徒が行っているらしい。これは大変だ。
敬人兄の机に目を向ける。私に渡された書類の数と比にならないぐらいの書類が山積みになっている。集中しているのか見ている私に気づいていない。
ルナは上手くやれているだろか。
零兄と凛月兄はそもそも参加しているのだろか。
…大神先輩に会いたい。
「蓮巳くん」
ビクッとした。扉の方を見ると零兄が立っていた。今はレッスン中のはずだ。どうして生徒会室に…。
「朔間さん、今日は立ち入り禁止のはずだが？」
「ちょいと休ませてくれ、レッスン室は暑苦しいんじゃよ…」
フラフラとソファに向かい倒れ込む兄。敬人兄がため息をつく。
「…仕事の邪魔をするなよ。休んだらすぐ出ていけ」
「分かっとるよ〜」
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作者名：りんごあめ | 作成日時：2021年1月6日 14時
