【あんスタ】吸血鬼の妹は狼に恋をする２ (ページ9)

今日:18 hit、昨日:5 hit、合計:77,861 hit

59 お粥ページ9

『…っ』

大神先輩が家を出た瞬間、全身の力が抜けてその場に座り込んでしまった。めちゃくちゃ緊張した。

『…あ、お粥』

こんな所で座っている場合ではない。部屋に戻って凛月兄のお粥を食べなければ。立ち上がり階段に向かう。

リビングの前を通ると楽しそうな話し声が聞こえた。母の声も聞こえる。元気になったようだ。

「え、なに。母さん達、前からエッちゃんと知り合いだったの？」

「私たちは一方的に知ってるだけよ、知り合いだったのはA。あの子は覚えてないみたいだけど…」

「昔はあんなに仲良しだったのにな～」

どういうことだろう。リビングから聞こえてきたのはそんな会話だった。

天祥院英智と前から知り合い？仲良し？私は覚えてない？全く意味が分からない。

「ただいま帰ったぞい♪」

ビックリした。後ろを振り向くと玄関に零兄が立っていた。家に帰ってくるなんて珍しい。

『零兄？どうして…』

「母さん達に心配かけたくないからの、というかどうしたんじゃ？こんなところで」

『大神先輩を送ってたの、今から部屋に戻るところ』

そう言って階段の方に歩こうとすると零兄に呼び止められた。

「A」

『…なに？』

「素敵な時間を過ごせたじゃろ？」

一気に顔が赤くなったことがわかった。何も言わず階段を駆け上がる。

わざとだ。兄は分かってて私と先輩を2人にした。バレてる。

『ビ、ビックリした…。』

急いで部屋に戻り扉を閉めた。お粥が置いてある机に向かう。凛月と書いてあるメモがお粥の横に置いてあった。

『いただきます』

お粥なんて久しぶりだ。

味は美味かった。見た目は酷いが目をつぶれば普通に食べられる。お粥を完食するとなんとなく自分の部屋にある本棚に向かった。全体的にホコリが被ってしまっている。

『…あった』

手に取ったのは一冊の分厚いアルバム。