【赤葦京治】夜空に迷って・1 ページ39
*
『うん、Aちゃんはちょっと……あっちに、行っててくれないかな』
友だちの声は控えめで、優しい響きも持っていた。けれど。
「う、ん……ごめん、ね」
冷たかった。どんどん自分のせいで冷えていく言葉の温度が、私を締め付ける。
申し訳なくて哀しくて、ごめんね、とまた繰り返した。彼女は曖昧に笑って、でもどこかホッとしたようで。
隅っこ。
隅っこが、私の居場所になっていった。
*
「Aさん、また隅っこにいるんだね」
ぎくり、となったのは彼の一言。緊張が私を襲う。
彼、赤葦くんは普通に疑問に思っていたようで、きょとんとした顔をしていた。私はいよいよ隅っこにすっぽり収まる。
体育館の角、隅っこは私にぴったりの場所だった。皆さんが練習しているのを、仕事がない時にぼんやりと眺める場所。
何の取り柄もない、厄介者の私にぴったりの。
「……ここが、落ち着くから」
そんなこと、彼には一生かかっても言えない。私をここに連れてきてくれたのは紛れもなく赤葦くんで、だからそんな彼に「私は邪魔な人だから」なんて言えない。
先輩たちはみんな、私はここにいていいと言ってくれる。……けれど、それでも、迷惑をかけているんじゃないかって、不安になる。
昨日も色々ひっくり返したし、今日は階段ですっ転んで足を捻って見学だし。
……マネージャーに見学ってあるんですか、と恐々聞いてみたら、雀田先輩は「無理しなくたっていいよ、座ってるだけでもちゃんと見えるんだから」と笑った。
確かに見える。皆さんがどんな風に動いているのか、近くでみるバレーのすごさとか、山ほど。
でも――でも。
やっぱり自信ない。そう思って俯いた時、赤葦くんは持っていたバレーボールを体育館の床に打ちつけた。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - ★マチャキ★さん» 好きだったらだいたい書いてますよー。 (2016年7月20日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
★マチャキ★ - 照ちゃんあった!! (2016年7月19日 20時) (レス) id: a549331ee4 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» そしてお察しの通り、及川さん大好きです。色々書きたくなるので、最初と最後に入れてるだけなんですけどね。前作も前々作も読んでくださってありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» コメントありがとうございます!とんでもない、長文コメント最高に嬉しいです…!!私も実は「この続き書きたいなぁ」なんて毎回思ってまして、うーん……したい、ですねぇ……(笑) (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
彗華@京都へ行きたい (元:凰華)(プロフ) - 前作、前々作を見て思ったのですが【及川さんで始まり及川さんで終わる】というループみたいなものが出来ているように感じました。作者様は及川さんが好きなのでしょうか?更新頑張ってください。応援しています!(長くなってしまいすみません) (2016年4月17日 22時) (レス) id: 4e64820097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年4月14日 18時