鼻で笑われたから回し蹴りして振った彼氏が推しだった件について。【そらる】

Vol.２ ページ2

「いってきまーす。
鍵、ちゃんと閉めてから学校行くんだよー」

菜摘「はーい」

部屋の奥から声が聞こえたことを確認すると、私はヒールを履いて、部屋を出た。

3LDKのマンションに菜摘と二人暮らし。
間取りも悪くないし、家賃は少しばかし高いけど、それなりにいい生活が出来ていると思う。

30階あるマンションの15階、つまり真ん中辺りに住んでいる。
まあ、ここは社長が妹と暮らすにはいい物件だと紹介してくれたからであり、…それなりに感謝はしてる。

鞄の中からミュージックプレイヤーを取り出し、ワイヤレスのイヤフォンを繋ぐとミュージックを設定し、歩き出す。

それにしても、良い声だ。

私が聞いているのは、そらるさんという絶大な人気を誇る歌い手さんがカバーした曲。

この声を聞くだけで、苛立っていることも、辛いことも忘れさせてくれる。
安心、させてくれる。

あんなに社長があーだこーだ文句を言いながら、会社に行っている理由はただ一つだけ。
この人の声が、私を元気付けてくれるから、この人の歌声が、私を励ましてくれるから。

だから頑張れる。

有給使ってまで、ライブに行ったりだってする。
歌ってみたの動画を投稿する度に、絶対コメントだってする。

ライブの抽選が外れても、グッズだけでもと思い買いに行ったりだってする。
それぐらい、好き、なんだ。

満員電車に揉まれながらも、会社に到着。
ワイヤレスのイヤフォンも取っていて、鞄の中に先程押し込んだばかり。

会社のゲートを潜り、ヒールの音を鳴らしながら、会社の中を歩いていく。

社員1「あ!逢瀬さん。おはようございます」
「ああ。おはよう」

社員2「逢瀬さん!早いご出勤ですね!」
「社長秘書ですから」

声を掛けてくる社員を適当にあしらい、社長室へと向かう。
社長室はこの会社の最上階。
そして、秘書室は、社長室の真ん前にあり、社長室に行くにはそこを通らなければならない。

つまりだ。


社長が、出入りする時、何度も必要以上に社長と顔を合わせる羽目になるんだよｯｯ!!!←

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