選ばれし者とその妹２ (ページ29)

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Story 79 ページ29

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　ルーピン先生の初授業で、教室に集められた生徒たちが真っ先に目にしたのは何やらガタガタと音を立てる洋服箪笥だった。

「箪笥の中にいるのはまね妖怪――ボガートだ。さて、この生き物はどんな能力を持っていると思う？」

「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うのはこれだ、と判断すると、それに姿を変えることができます」

「私でもそんなに上手くは説明できなかった」

　ルーピン先生はハーマイオニーを誉め、次にハリーにこう問題を出した。

「私たちのほうがまね妖怪より有利な立場にあるが、何故だか分かるかな？」

「人数がたくさんいるから、どんな姿に変身すればいいか分からない？」

「その通り」

　ボガートを本当にやっつけるのは＂笑い＂であり、そのためには滑稽な姿をとらせる必要がある。

「ボガートを退散させる簡単な呪文がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて……ばかばかしい(リディクラス)！」

　全員が唱えたところで先生は後を続ける。

「ここまでは簡単だけどね、呪文だけでは十分じゃない。そこでネビル、君の登場だ」

　突然名指しされ、ネビルは戸惑っているようだった。他の生徒も何が始まるのかと興味津々で見ている。

「ネビル、君が一番怖いものは？」

「スネイプ先生です……」

　みんな笑った。ネビルはスネイプ先生の授業では普段の十倍もへまをする。
　無理もない、と誰もが思った。授業のたびにいじめられたら神経をすり減らしてミスをするのは当たり前だ。

「君は確かおばあさんと暮らしているね。おばあさんの服装を想像してごらん。声に出さなくても、思い浮かべるだけでいい」

　先生が何をやらせようとしているのか理解したAはそれ以上は何も考えないようにした。想像しただけで笑ってしまう。

「出来るかな？じゃあ、杖を構えて……いち、にの、さん」

　カチリと音がして箪笥の扉が開き、スネイプが姿を現わす。目つきも、歩きかたも恐ろしいくらいに彼そのものだった。

「リディクラス！」

　ネビルが唱えるとスネイプの服装が一瞬で緑色のワンピースへと変わった。みんな大爆笑だった。上手く再現しているが故に、女性物の服を着た姿は誰が見ても滑稽だった。

　次に指名されたロンが進み出るとボガートは彼の前で巨大な蜘蛛に変わる。

「リディクラス！」

　ロンが唱えた直後、蜘蛛の足にスケート靴が履かされ、進もうとするたびに滑って笑いを誘った。