選ばれし者とその妹２ (ページ27)

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Story 77 ページ27

「まず、こいつの側まで歩いてゆく。そんでもってお辞儀する。そのまま辛抱強く待つんだ。こいつがお辞儀を返したら触ってもいいが、返さなかったら素早く離れろ」

　手順を教えてからハグリッドは「よし、誰が一番乗りだ？」と皆を見回した。鎖で繋がれているのが気に入らないのか、ヒッポグリフは荒々しく羽をばたつかせている。それを見てほとんどの生徒が後退りした。

「誰もおらんのか？」

　ハグリッドが困ったように言うと、一人の生徒が進み出た。ハリーだった。彼はハグリッドの最初の授業をなんとか成功させてやりたかったのだ。
　
「僕、やるよ」

「偉いぞ、ハリー！よーし、そんじゃ……」

　ハリーはハグリッドに教わりながら深々とお辞儀する。すると数秒後、バックビークも同じような仕草をした。ハリーがゆっくりと嘴を撫でると、クラス全員が拍手した。

　それで終わりかと思いきや、ハグリッドは今度はヒッポグリフの背中に乗ることを提案した。ハリーがおそるおそる飛び乗ると、バックビークは彼を乗せて森の外へ飛び去って行った。

「大丈夫かな」

　Aが心配そうに呟くと、ドラコは笑ってこう言った。

「僕はあいつが上空で振り落とされるほうに賭けるね」

　だが、ハリーは無事だった。ヒッポグリフと共に帰還した彼の姿は魔法戦士のようにも見えた。

　ドラコと取り巻き以外の全員が歓声をあげ、ハグリッドも嬉しそうに頷いていた。

「そんじゃ、次は……A、やってみるか？」

　思わぬ指名にAは驚いたが、ハリーの姿に勇気づけられて前へ出た。教わった通りにお辞儀をし、許可が降りるとバックビークの隣に立って触れた。
　その時、

「なんだ、簡単じゃないか」

　ドラコが尊大な足取りで向かってきた。

「こいつ、全然危険じゃないな。醜いデカブツの野獣くん――」

　次の瞬間、ヒッポグリフが大きく羽を開いた。はずみでAは吹っ飛ばされたが、なんとか受け身を取って怪我は免れた。
　だが、ドラコは……。

「死んじゃう！死んじゃうよ！」

　腕を押さえて喚く彼に追撃をしかけようとヒッポグリフは後ろ足で立つ。

「護れ(プロテゴ)！」

　咄嗟にAは杖を向けて叫び、見えない壁がヒッポグリフを阻む。ハグリッドは何とか首輪をつけると、負傷したドラコを抱え、城に向かって駆けて行った。

　彼の魔法生物飼育学の授業は失敗に終わってしまった。