選ばれし者とその妹２ (ページ24)

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Story 74 ページ24

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　宴が終わった後、皆は雑談に花を咲かせながらそれぞれの寮へ戻った。

「おやすみ、A」

「また明日ね、ハリー」

　ハリーはグリフィンドール寮へ、Aはレイブンクロー寮へと足を進めたが、二人は相手の姿が完全に見えなくなるまで名残惜しそうに振り返っていた。シリウス・ブラックの件で、互いのことが心配で仕方がなかったのだ。

　寮に着くとAはまず翌日の時間割に目を通し、教科書とノートを準備した。その他やるべきことを済ませてからベッドに腰掛け、一人物思いにふける。

　二年生の頃はヴォルデモートへの対抗勢力を増やすために生徒たちに戦闘術を教え、そのたびに自分に関する記憶を彼らから消してきたが、今年もその活動を続けるつもりだ。ヴォルデモートの手先が脱獄したことで今後はより一層警戒する必要がある。さもないと、また誰かが命を落とすかもしれない。心を許した教師――クィリナス・クィレルのように。

「！」

　ほんの一瞬、背中に痛みが走った。何かの弾みにアザができるということは珍しいことではないが、その時の鈍痛とは違い、強く存在を示すようなものだった。

　女子寮の隅には姿見が置いてある。念のために服を脱いで鏡に背を向け、首を捻って見てみる。

　五つの小さな傷が背中に刻まれていた。二年前にはなかったものだ。そしてそれは記憶違いでなければ、列車内で吸魂鬼に爪を立てられた場所と一致していた。

　Aはゾッとしたように鏡から目を背け、急いで服を着た。ただの傷だ。何の力もない。そう言い聞かせ、ベッドに潜り込んだ。

　
　木の葉の擦れる音と虫の鳴き声。冷たい秋の風が右腕をかすめる。聴覚と触覚、この二つが存在しなければ無の世界だっただろう。どんなに目を凝らしても、何も見えない。自分の体すら闇に塗りつぶされてしまったかのようだった。

　ふと、遠くからひとつの気配のようなものが届いた。人間のものにしては複雑さに欠ける。確かなのは、殺意に満ちているということ――。

　ここでAは飛び起きた。カーテンを開け、窓に目をやる。外はまだ夜だった。

　ただの夢で片付けるにはあまりに鮮明だった。何故あんな夢を見たのか。そもそもあれは本当に夢だったのか。寝ている間に誰かによって外に連れ出されたとでもいうのだろうか。

　Aは再び横になった。考えるのは後にしよう。それに明日は調べたいことがある。