選ばれし者とその妹２ (ページ12)

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Story 62 ページ12

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　医務室のベッドにはドラコの姿もあり、数人のスリザリン生が見舞いに来ていた。箒から転がり落ちたようで、どうせ大したことはないと分かりつつも便宜上心配するふりをしてAは駆け込んだ。

「大丈夫、ドラコ？」

「うー……駄目だ……うう……」

　確かに駄目だと思った。演技が。
　そう思った時、ちょうど通りかかったマダム・ポンフリーが「呻かなくてよろしい、あなたはもう大丈夫」と言ったため、Aは危うく吹き出しそうになった。

　肝心のハリーの腕の件だが、治すのにはかなりの時間がかかると言われた。骨折ならすぐに治せるが、ロックハートが余計なことをしたせいで延びたのだ。
　
　マルフォイの取り巻きのスリザリン生たちと歩いていると「そういえば」と一人が話し出した。

「この前、一年から聞いたやつなんだけど、他の寮の奴らの中にも何人も居たらしいぜ」

「え？本当なのか？」

「えっと、何の話？」Aが尋ねる。

「いや、うちの一年が急に防衛術とか出来るようになってさ。誰に教わったのか聞いたんだけど、本人は何もおぼえていないんだ」

「そう。不思議なことに、どこで誰に教わったのかということだけ綺麗さっぱり忘れてるらしい」

　Aはかつてクィレルが使っていた空き教室で寮生たちに戦闘術を教え、そのたびに記憶を消してきた。ヴォルデモートに対抗する勢力を増やすために。

「他の寮からも急激に上達した奴が出てるらしい。そいつらも同じだって。スリザリンだけでいいのになー」

「ロックハート先生じゃない？」Aがとぼけると全員が否定した。

「あはは、そんなわけないだろ！だってあいつ、初日の授業から駄目駄目だったぜ」

「ロックハートじゃないことは確かだ。少なくとも教わった生徒の中に骨をなくした奴はいないからな」

　彼らはまた笑い、なかなか上手いことを言う、とAは感心した。仮にロックハートが防衛術を教えようものなら、下手すれば部屋が爆発するだろう。

　
　Aは猫の石化事件のことをすっかり忘れていた。次の日の朝、ハリーを見舞いに行った際に彼の口からコリンという生徒が石にされたことを聞かされるまでは。