選ばれし者とその妹２ (ページ2)

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Story 52 ページ2

「私はどうすればいいですか？」

　手を挙げたAに「問題を起こさないよう大人しくしているんだ」とバーノンおじさんが言う。

「部屋か物置にこもっててもいいからとにかく静かにしていろ」

「わかりました」

　そう答えつつもAは警戒していた。ダドリーの誕生日祝いの動物園の一件のように、大事な時に限って何かが起こる気がしたのだ。彼女は二階に上がるとアレスの鳥籠を物置に移動させた。こうしておけば何かあった場合にいつでもフクロウ便を出すことができる。
　
　しばらくしてメイソン夫妻がやってきた。少しの間物置の中から会話に聞き耳を立てていたAだったが、ふと上階の物音がするのが気になって部屋を出る。
　二階へ上がり、扉を開けた彼女はその場で固まった。

「……え？」

　Aの目はベッドの上の珍客に向けられていた。大きな目にコウモリのような長い耳、服の代わりにボロボロの布を着ている。

「A・ポッター！妹さまにも会えるなんて感激です！」

　甲高い声を出した生き物を「静かに……！」とハリーが慌てて止める。

「ハリー、その子誰？」

「えっと、屋敷しもべ妖精のドビーっていうんだ」

　仕えている主人にも内緒でここに来たとドビーは言い、さらに友人からの手紙を隠していたことも白状した。ハリーとAの身の安全を守るため、学校に戻りたいという気持ちを少しでも削ごうとしての行動だったのだと。

「ドビー、手紙を返してよ」

　ハリーが立ち上がると、ドビーは手紙の束を持ったまま逃げるように部屋を出た。その後をハリーとAが追いかける。

「ハリー・ポッター、A・ポッター。あなたたちは『学校に戻らない』といわねばなりません」

「言えないよ……！」

「それではこうするしか有りません。あなたたちのためなのです」

　そう言うとドビーは隅のデコレーション・ケーキを魔法で宙に浮かせ、リビングまで移動させた。ケーキはメイソン夫人の頭上で止まる。

　Aは不吉な予感に駆られ、物置に飛び込んで仕度を始めた。教科書をトランクに詰めている間にリビングから短い悲鳴があがった。

「申し訳ありません！うちの甥ですが情緒不安定で、知らない人を見ると動転するので二階に……」
　
　バーノンおじさんが必死に弁解する声が聞こえてくる。現場を見ていなくてもドビーが夫人の頭にケーキを落としたことは分かった。