【文スト】警察官に補導されました【中原中也】

深夜1時 ページ10

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｢ あ、あんまり揶揄うと怒りますよっ！ ｣
｢ はは、冗談だって ｣




楽しそうに笑う中原さんにむけて、頬を膨らませてみせる。また揶揄うように笑って、机上のコーヒーを一口飲んだ。

本当に、やめて欲しい。中原さんのことを好きだと自覚してからは、そういった冗談も上手く躱しきれる自信が無い。ふとした瞬間に感情が顔に出たりしてしまえば其れこそあたしの恋は終了の合図を告げるだろう。
だから告白なんて出来ない。中原さんみたいに格好いい人に、あたしは圧倒的に釣り合わない。そんなこと分かってるけど、やっぱ中原さんの理想に近付く努力はしたい。中原さんはコーヒーを飲み干した後、考え込むようにした。




｢ 好みのタイプなあ。あんまそーゆうの考えたことねえけど…… ｣
｢ 聞かれないんですか？中原さん絶対モテるじゃないですか ｣
｢ 別にモテねえよ。彼女だって、この年齢まで出来たことねえし ｣





思わず｢えっ｣と口に出た。

中原さんは不思議そうな顔をするけれど、誰だってこんな反応をするだろう。だって、中原さんに一度も彼女が居たことないなんて、信じられない。こんなに格好いい人、綺麗な人でもほっとく訳ないのに。
有り得ない有り得ないと考えながら、ふと一つの考えに至る。この年齢まで出来たことがないっていうことは、




｢ え、て、てことは、中原さん今フリーってことですか……？ ｣
｢ フリーって云い方はどうかと思うけど……ま、そーなるな ｣




また｢えっ｣と口に出た。
今度は｢馬鹿か｣と頭をはたかれた。

思わず安心してしまった。今中原さんには、彼女がいない。ってことは、もしかしたらもしかしたらで、あたしが彼女になれる可能性も少なからずあるわけで。
ヤバい。どうしよう。中原さんの彼女。一気に現実味を帯びてきたそのフレーズに、あたしの心は簡単に高鳴った。頑張って努力して、アピールすれば、もしかしたら中原さんが振り向いてくれるかもしれない。中原さんの隣に並べるようになるかもしれない。あたしは妄想を膨らませ、思わず別の世界に。そんなあたしを現実に引き戻したのは、矢張り中原さんだった。




｢ おい。そんなに俺に彼女が居ねえことが嬉しいのか ｣
｢ はい！そりゃあもう！ ｣
｢ 何でだ ｣
｢ 取り敢えず中原さんは何でって聞くの禁止にしましょう！ ｣
｢ 何でだよ！ ｣




困り顔で、でも楽しそうで。

そんな中原さんを見つめながら、尚あたしの心は高鳴っていた。

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