上から落ちて、下から落ちて (ページ20)

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fIFTeen ページ20

「さぁ、続いてはアイドリッシュセブンの皆さんです！」
遠くから黄色い歓声が聞こえてくる。
そんなステージ上のことなんて知らないAが舞台裏、出だしの練習をしながらその場を行ったり来たりしていた。
仮面を弄び、そわそわして落ち着かないようだ。
「歌詞、間違えたらどうしよ...振り、間違えたらどうしよ...」
負のループに陥ったAを見て、
「大丈夫！なでしこなら出来るさ！」
響がペンライトを振り回しながらエールを贈る。
Aはまだ緊張しているのかその場をぐるぐる回る。そして急に立ち止まり、足首を押さえた。
「...！なでしこ、そこは」
響が慌てて鞄の中の何かを探す。
「あ！いいの！ちょっと気になっただけ。ほら、ちゃんとジャンプも出来る！」
Aはその場で何回かジャンプして見せる。ぴょんぴょん跳び跳ねている彼女を見た響は微笑ましそうに見ていた。

そうこうしているうちに、舞台裏にはアイドリッシュセブンの新曲が流れてくる。
「これがアイドリッシュセブン...この人たちと同じステージに立てるなんて...！」
Aはキラキラした笑顔で響を振り替える。
響は少し苦笑いをし、Aに問いかける。
「...うん、でもなでしこはその上を行くんだろ？」
「はい！」
Aは元気よく頷いた。

そろそろアイドリッシュセブンの曲も終わりに近づき、Aがスタッフに呼ばれる。
その前に響とAは邪魔にならない隅っこに行き、向かい合った。
「【秋の草】の皆も応援していた。皆の気持ちを背負って頑張っておいで。じゃあ、いつものやるか」
「はい」
Aは響へ近づき彼の両手を握り、うつむいて目をつぶった。
そして響もAの両手を握り返し、呟く。

「お前は今から本当の(・・・)なでしこ。世界で一番のアイドルになっておいで。

You can do it ,and aiming for the highest height!」

Aはそれを聞きおえるとゆっくり目を開く。
そして手にしていた狐の仮面をつける。

響の前にはさっきまでの面影が消えた、可憐な少女が立っていた。