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カーディナル・ブルドッグを君へ 5 ページ37

「…………は?」


腕輪が、無い。手をかざしてまじまじと見て、起き上がってもう一度見た。
無い。腕輪がない。見当たらない。
え、え、なんだこれどういうことだなんだ?? ん? んんん?
念願だったはずなのに、現実味が無い。受け入れられないというより信じられない。え、なにこれ。実は右手から別の場所に移動してましたとかじゃないだろうな?

ばさりと布団を捲って体の隅々を見る。……無い。どこにも、無い。
窓の外の満月が雲から顔を出し輝いた。部屋が照らされる。状況が飲み込めない僕は、窓の外を見て一つの結論に至った。


今なら、脱走できる。


「…………ご自由に、ってか」


息多めで呟いて、また笑いが零れた。本当、あいつ何がしたいんだ。
思い浮かべた紫の髪のあいつは、想像の中でも腹が立つ笑みだった。いつも浮かべる、余裕と自信に溢れた笑み。

ぎり、と歯軋りをして息を吐いた。何から何まであいつの掌の上って感じでちょっと……いやかなり腹立たしいことこの上ない。


「………………ご好意に甘えてやるよ」


呟いた言葉は部屋の暗闇に消えて、僕はそのままベッドから降りて近くの壁に立てられた槍を手に取り窓に足をかけた。






朝。
部屋もベッドももぬけの殻。騒ぐ臣下に走り回るたくさんの足音。
部屋の扉の前に立った我らが王は、どこか少し、寂しそうな顔をしていた。


「……行ってしまったか」


王の掌で、きらりと紫の腕輪が輝いた。





「引き止めないさ。当たり前だろう?」
「俺にはそんな資格、無いからな」
「それでも俺は、お前を守るための嘘をつく」



『カーディナル・ブルドッグを君へ』

IF if if……→←カーディナル・ブルドッグを君へ 4



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みかん(プロフ) - 了解しました!続きも楽しみに気長に待ってます! (2019年5月28日 13時) (レス) id: 7884fe9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» お待たせ致しました。リクエスト作品が出来上がりましたのでお伝え致します……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - みかんさん» 申し訳ありません、先に白龍の分ができあがりましたのでこちらを先に公開致します。続きはもう少々お待ちください……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» 了解です! 他のリクエストも消化しつつになるので少し遅れますが、ご了承くださいませ…… (2019年5月1日 14時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
あい - そうだったのですかこちらこそすみません (2019年5月1日 11時) (レス) id: bcb6bd7e00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年3月1日 2時

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