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カーディナル・ブルドッグを君へ 4 ページ36

「っく、あ゙っ、ああああっ……」


ぼろぼろ、ぼろぼろ。
溢れる涙が止まらない。出てくる声は全部全部、無理やり出させられているかのような声。槍は僕の手元にある。これを使って右手を吹っ飛ばせば、それで全てが済む。

だというのに、どうしてこいつは。


「A……」


ぎゅっと僕を抱き締めるこいつは、本当に何を考えているのだろう。優しく抱き締めて、頭なんて撫でちゃって。こいつは本当、なんなんだ。


「もうっ、いやだ……こんな、こんな、の……ぼく、は……!」

「ああ、ああ……。辛かった、辛かったな。すまない……」

「っう、なん、おまえ、な、んで……!」


なんでお前は、お前が。そんな辛そうな声を出すのさ。
嫌だ。嫌だなぁ。抱き締められて、頭撫でられて、ぼろぼろぼろぼろ泣いて、泣き喚いて。それなのに、心地いいと感じてしまう自分が嫌だ。ぬるま湯に浸かっていたいと願っている自分が、心底嫌だ。


「ごめんな、A……」


とん、と頸に衝撃。ぐらりと揺れる視界。落ちていく意識。
その感覚が妙に気持ちよくて、心地よくて、僕は抗うことなくそれに飲み込まれてしまったのだ。







意識が持ち上がってゆるりと瞼を持ち上げると、見慣れた天井に暗い部屋。
気だるい体と重たい頭にうんざりしつつ、目元になんだか違和感を感じた。どうしてか考えていると、思い当たる節が一つ。

馬鹿みたいに泣き喚いた記憶が引っかかり、おでこに右手の甲を乗っけた。


「泣き喚いて、そのまま寝落ち……いや、気絶させられたのか……ぁー、もう……クソガキかよ、僕……」


ははは、なんて乾いた笑いを零して、情けなくなった。最終的に泣き喚くしかないなんて、本当ガキもいいところだ。……いや、あいつから見れば僕は十分ガキなのか。
視界には天井のおでこに乗っけたままの僕の右手。そして当たり前のようについている、紫の腕、輪……。

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みかん(プロフ) - 了解しました!続きも楽しみに気長に待ってます! (2019年5月28日 13時) (レス) id: 7884fe9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» お待たせ致しました。リクエスト作品が出来上がりましたのでお伝え致します……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - みかんさん» 申し訳ありません、先に白龍の分ができあがりましたのでこちらを先に公開致します。続きはもう少々お待ちください……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» 了解です! 他のリクエストも消化しつつになるので少し遅れますが、ご了承くださいませ…… (2019年5月1日 14時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
あい - そうだったのですかこちらこそすみません (2019年5月1日 11時) (レス) id: bcb6bd7e00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年3月1日 2時

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