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第43話 過去の約束 ページ45

女は立ち上がり、空へ手を伸ばした。

「私も、あの空へ飛んで行ってみたいわ。きっと美しいわよね…………そんな場所にいたら、皆…………笑って暮らせるかしら。」

「いいおとながばかみたいなこというなよ。」

「あら、貴方だって虹に向かって跳ぼうとしてたじゃない。」

「うっ………それとこれとはべつだ!」

女はまた微笑む。

「ねえ、約束してくれないかしら………………私と………」

「いいけど、なんだ?」

空の方を向いていた女は、天馬の方に振り返る。

「……………………………を、見つけ出して……………!」

その時、なんと言っていたかはよく聞き取れなかった。

しかし、天馬の脳裏にはその時の女の顔が焼きついていた。

今まで笑っていただけの女の顔が、その時だけ泣きそうなぐらい悲しそうだったのだ。

天馬はただ、黙って頷いた。





およそ14年ぶりに来たその海岸で、天馬はそれを思い出した。


あのとき、なんて言ってたんだ………………?あいつ……………


そんなことを考え眉間にしわを寄せていると、Aがごそごそと買い物袋からあるものを取り出した。

「天馬様!あの………これ、先日のお礼にと買って来たのですが……………。」

そう言いながら取り出したのは、以前立ち寄った甘味処のみたらし団子だった。

醤油の香ばしい香りが天馬の鼻をくすぐる。

「おっ……………!気が効くじゃねえか。ありがとな、キツネ子!」

天馬は一気に2本手に取り、みたらし団子を美味しそうに頬張る。

そんな様子をAは嬉しそうに見つめ、そのうちフッと視線を海へ飛ばした。

3時を過ぎ、少しずつ白い光がオレンジ色を帯び始めた太陽は、相変わらず島を照らし続けている。

外に居続けていると汗ばみすらしてくる気温の中で、二人は木陰に寄り添っていた。


あ…………昔あいつが言ってたこと…………まあ、いいか。そのうち、思い出せるようにしよう……


最後の一本を頬張りながら、天馬は考えるのをやめた。

「お味はどうでしたか…………?天馬様、」

Aは心配そうな表情をする。

天馬はみたらしが付いた指をぺろりと舐める。

「まあ悪くはねえな!今度俺の一番すきなみたらし団子の店を教えてやる。」

「ありがとうございます!」

そうして二人はまた、暑さを少しでも和らげるために、冷たい木に寄りかかったのであった。

第44話 青陽院は騒がしく→←第42話 在りし日の少年



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設定タグ:双星の陰陽師 , 鸕宮天馬 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時

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