第44話 青陽院は騒がしく ページ46
次の日、Aは青陽院に復帰した。
螺鈿から降りて、校門への大路に合流した時、Aを見た生徒達はギョッとした。
「おい、あいつだよな…鸕宮分家の早百合さんを圧倒した奴って……」
「ああ……噂によると、鸕宮天馬が寵愛してる従者らしいぞ………」
「まじかよ!?不用意に近づいたら終わりだな………」
そんな男子生徒達の会話が聞こえ、Aは内心すごく焦っていた。
いやいやいやいや、圧倒してませんし!むしろこっちが重傷でしたし!
ていうか寵愛してる従者ってなんですか!?色々誇張されている気が………
そんなことをぐるぐると考え、Aは先日受けられなかったクラス分けテストを受けるために、試験場へと向かった。
生徒の波からは外れ、校舎とは別方向にある試験場へ向かったとき、Aの前に一人の少女が現れた。
「貴方、何か忘れてませんこと………?」
「早百合様……!」
自分を待っていたらしい早百合は、相変わらず高圧的な態度だったが、それでも初めてめて会ったときよりかはずっと和らいでいた。
早百合は自分の通学バックから、盗んでいたAの白い狩衣を取り出した。
「すっかり忘れていました………ありがとうございます!早百合様!」
そう言い笑顔で受け取ると、早百合は意を決したかのように頭を下げる。
「えっ!?そんな、早百合様、おやめください………!」
「ごめんなさい……先日は本当に酷いことを…私…私……!」
するとAは両手で早百合の手をぎゅっと握った。
驚いて顔を上げた早百合の目に飛び込んできたのは、以前とは見違えるほど真剣な表情をしたAだった。
「早百合様は悪くなどありません………全ては、早百合様に呪詛をかけた輩のせいです!鸕宮家に仕える者として、必ず犯人には裁きを下します。ですからどうか、自分を責めないで下さい…!」
驚いた表情をしていた早百合だったが、そのうち涙をぽろぽろと流し始めた。
「っ…!私、今までずっと人を信じられなくて……ろくに友達も作れなくて……ヒック…」
泣きながらそんなことを漏らし始めた早百合の頭にAが手をぽんと置く。
早百合の方が背は高いため少しだけ不恰好になるが、Aは気にしない。
「そうだったんですね………私も、家族以外の人をずっと信じられないでいました。だから、早百合様のお気持ち、少しだけ分かります。怖いですよね……信じるって………。」
Aは、自分に重ね合わせるように早百合を見ていた。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時