第28話 天馬の焦燥 ページ30
「A………………!!」
天馬が大切な宝物でも呼ぶかのような声でAの名を呼ぶ。
しかし、Aの無事を確認すると、今度は打って変わって殺気立った声で有馬に言った。
「有馬…………なんもしてねえよなぁ?んん!?」
最近の天馬様はイライラしがちな気がする、とAは思った。
内心でハラハラしっ放しのAとは対照的に、有馬は余裕の表情で接している。
「言ったじゃないか、なーんもしてないよ☆楽しくおしゃべりしてただけさ☆ねえAちゃん?」
「……えっ、あ………はい。」
有馬の態度によってさらにイライラする天馬に、Aはびくびくしっ放しだ。
「あー怖い怖い、それじゃあ僕は失礼しようかな。話の続きはまた今度だね、Aちゃん☆」
「今度なんてない!!」
病室を出る有馬に、天馬がそう怒鳴った。
足音が聞こえなくなると、天馬はすぐさまAの方を向く。
そしてAの肩を掴み、真正面からAの顔を覗き込んだ。
「A!大丈夫か!?なんもされなかったか!?」
珍しく心配そうな表情をする天馬に、Aはまた驚かされる。
「は、はい………大丈夫ですけど、何かあるんですか?」
「いいや、なんでもない……。」
そういいパッと手を離すと、きまりが悪そうに窓へと視線を送る。
「………で?どうだった?初陣はよぉ。んん?」
話題をすげ替えるように、天馬は笑みを浮かべて尋ねた。
「………全然ダメでした。まだまだ修行が足りませんね。私。」
「そんなことねえよ。俺が見てきた中で一番動けてたと思うぞ。お前。」
「そう、ですか……?ありがとうございます。天馬様に褒めていただけると嬉しいです。」
笑顔でそう言うと、天馬は「おう。」と心底優しい声で返した。
「失礼しまス。院長直々の検診の時間っスよ〜。」
ドアが開き、突如として入ってきたのは、十二天将の一人である水度坂勘久郎だった。
マスクで口元が見えない分、Aは余計目の前の人物の本質が解らなかった。
「院長先生…………こいつは、もう家に帰れるのか?」
「それは今から言うっス。天馬、ちょっと席を外してもらってもいいスか?」
「…………どうしてもか?」
「患者さんのプライバシーに関わるっスから。」
「じゃ………終わったら呼べよ。A。」
そう言い天馬が病室を出ると、勘久郎は真面目な顔でAに向き直る。
「検査結果っスけど………残念なことに………。」
Aはまた毛布を握りしめた。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時